4-3.オーバーラン

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曖昧な言葉で誤魔化していた本音を叫ぶのは、恥ずかしくて、照れくさくて。 楓はそっぽを向いてしまう。 爽介はというと、呆然とすることしかできない。 楓はいつかまたどこかで爽介と演奏したいと思っている?つまり、相棒としてもう一度。 いや、何度でも演奏したいと。 だとしたら。 「楓さん」 澄んだ声がした。 「先輩」ではない、一人の奏者として、楓の名を呼ぶ。 これから始まる風使いと魔法使いの時間を動かすように。 「……でいいですか?」 リアクションが返ってこない事に不安を覚えて、確認するように爽介は問う。 ようやく、楓も顔を向ける。 その表情は笑顔。 「いいんじゃないか?爽介」 二人の奏者の笑顔が、時間を動かした。
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