4-3.オーバーラン

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爽介がひとしきり泣いた後に楓がため息をついた。 「……ところで、それはハンカチ代わりにするために貸したんじゃない」 それ、と言って指を指したのは楓の貸したマフラーだ。 爽介は手にしたマフラーをタオルの如し涙で濡らしていた。 「へ?だって泣いていいって……」 「だからって、マフラーで涙と鼻水拭く奴があるか!」 「えー!ていうか鼻水なんて出してないですよ!失礼な!」 「失礼なのはお前だろ!お前が泣いた跡を隠すために貸したのに……」 「だったら最初からそう言ってくださいよ!」 「うるさい!まさかこうなるとは思ってなかったんだよ!」 二人の叫び声は徐々にボリュームを増していく。 涙でぐしゃぐしゃになったマフラーを見て、楓は貸したことを後悔した。 流石に、借りたものだったから爽介も少し負い目を感じてしまう。 「……じゃあ、今度クリーニングして返します」 「今度っていつだよ」 「それはっ……」 爽介が約束の時を告げようとした時だった。
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