4-3.オーバーラン

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少し離れたところでも絶対に聞こえる様に叫んだ。 切羽詰まった声に、背を向け数メートル離れていた楓も思わず振り返る。 「なんだ?」 「これ、返す時なんですけど」 「あぁ、早めにな」 先ほどとまた同じ話をする爽介をもう一度淡泊にあしらう。 それでも爽介はまだ何かを言いたそうで、それは何故か、顔が見えなくても分かった。 「『次に一緒に演奏するとき』でいいですか?」 「あ?」 爽介の決めた約束の日に、思わず聞き返してしまう。 すぐに返せと言ったのに、それは、未定の約束。
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