エピローグ

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「あぁ、そうだ。楓さん。まだ楽器ってやっているんですか?」 「たまに、吹いてる……。」 それならよかった。と爽介は安心して笑顔を見せる。 「1曲だけ演奏するんで合わせていただけますか?」 マフラーを返す時それは二人がもう一度巡り合って共に演奏をするとき。 「約束通り。」と付け足して爽介は嬉しそうに笑う。 「あと、この不味いカクテルのお口直しに」 「まずいは余計だ」 そう言いつつも10年ぶりの爽介とのセッションを楓も少し楽しみなのか、楽器を組み立てながらリードを咥える口元は少しばかし上向きだ。 爽介によって琴のドラムが輝くような音を出す。 楽器を組み立て、軽く音出しをした楓はピアノ椅子に座った。 「そこで吹くんですか?」 「あぁ、俺もこっちの琴の席にお邪魔させてもらうよ。」 独りで演奏していた琴の席だ。 その席に座って演奏すれば、ピアノを弾いていた琴に一人じゃないよ、一緒に演奏しよう。と伝えられる気がする。 爽介がメイプルのスティックを叩きカウントをすれば、あの日の約束をようやく果たす時間が始まる。 二人の奏でるセッションと琥珀色のカクテルが星のように輝いた。
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