プロローグ

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マスター以外にここにいるのはカクテル用の酒瓶と楽器。 酒はもちろん自前だが、ステージ上で照明を浴びるドラムセットとピアノは、古い友人からのもらい物だ。 それにしても今夜は冷える。 まるで冷気がどこからともなく侵入しているように。 「ん?」 やけに寒いと思えばドアが開いている。 本当に外気が店内に入っていたようだ。 しかし、侵入者は外気だけではなかった。 「すみません」 凍てつくような外気と共に来店したのは客だった。 正確には時間外なのでもう客ではない。 頭は短髪のツーブロック、服装はパーカーにジーパンとダウンジャケットといったラフな格好の若い男。 右手にはトートバック、左手には紙袋を持っている。
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