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「……嫌じゃ無かったのかよ、そんなコンクール」
「嫌、ではなかった。結果はどうすることもできないし。けど、個人的にはとても悔しかったよ。気が狂いそうになった」
佳貴の笑顔が曇る。輝かしい演奏者でいたい。
それだけのために入ったのに、悔しい思いをしたり、辛い思いをしたりした。
それでも佳貴が部活を辞めなかったのは三年生の時に最後の最後まで舞台に乗れることを諦めなかったからだ。
それに、仲間の事は大好きだった。
舞台こそ上がれることは無かったが、大好きな仲間の演奏を特等席で聴けたことだけは自慢だ。
自慢の、仲間たちだった。
できることなら、一緒にステージに乗りたかった。
「コンクールに罪は無いし、いつか乗れる機会があるなら乗りたいと思っていたよ。そう思って今回のアンサンブルの話受けたの。僕はね」
こんなに早く来るとは思わなかったけど。
と、佳貴は笑う。
先ほどまで曇っていた表情が晴れるように。
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