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「 ねぇ富士子ちゃん、思い出したくない一日はここに吐き出してしまえばいいんだよ。」
肩を寄せ合って歩いていると、あやかちゃんが優しく言った。
「あやかちゃん天才。最高。単純で明快だね。」
あやかちゃんの明るさが富士子に影響を与えたみたいだ。家と学校には居場所が無いけど一歩外に足を踏み出したらこんなに美しく世界は広がっている。
「 あやかちゃんは何でも知ってるんだね。」
富士子が言うと、あやかちゃんは、
「 みんなが教えてくれたんだよ。富士子ちゃんが大切に育てている植物達や庭の昆虫や虫たちや蝶達が小鳥さん達に伝えて、カラスさんや鳩さん達やネコさん達がみんな心配してた。富士子ちゃんが家を出て山の中に入って行ったってね。不幸の中に富士子ちゃんが漂っているのをみんな知ってる。
今日は満月の夜だったから私は何にでも変身できるような気がしてた。富士子ちゃんを見た瞬間に心が沸いて呼吸を合わせたら出来たんだよ。」
黄色いイチョウの葉っぱが風に吹かれて地面を転がっていく。
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