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立ち止まらずに私は歩いた。
私は信じられないほどの苦労人だったが誰もそれを信じてはくれないんだ。世界は夕凪に身勝手に沈み私の輪郭は曖昧になっていく。そのさまはとても美しいが私には関係無い事だ。これでおさらばだから。私の頭でわかってしようがないから感情がサイレンのように頭の中で鳴り響く。
私はここまでと悟った。どこまでも単純だ。目に写るものが全て偽物だった。お魚をくわえたネコが私の前を横切った。私は憂いをまとい闇に堕ちた。この世界からはじき出された私は明日を信じる事が出来ない。血の滲むような修羅の道を歩いて来た私は自分を取り戻す為に夜を待つ。不完全で完全な夜を待つ。この世の中に私の居場所は無い。
今日は満月の夜で私は良かったと思う。
熱く燃える炎が私の胸に灯った。
私は無垢では無いけど、純粋だ。自分で言うのもなんだけど。
山の中で誰もいない。ちょうどいい木も見つけた。
(私は何物にもなれなかったな。寂しいとか愛とかわかんないな。くだらない毎日だったな。今度は風にでもなりたいな。雲でもいい。私は消えて行くガールだから。私の人生は悪い夢みたいだ。夢だったらどんなに良かったか。知らないを知りたかった。また蝶々の夢を見るのかな。私のことはみんな忘れてくれるはず。)
目をつむったら楽になるかなと思った時に向こうに私にソックリな人がいる。
( 誰も居なかったはず。人の気配は無かったはず。
私に似てる。)
女の子がこちらに向かって歩いて来る。信じられないくらいに私に似てる。
( そっくりだ。鏡を見てるみたい。)
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