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あやかちゃんは富士子の周りを飛び跳ねる。同じ姿をしているのに全く違う人みたいだ。
( 私があんなに無邪気な女の子だったのはいつまでだったかな?)
「富士子ちゃんも純粋で無邪気だよ。ごめんなさい、なんか私あなたの考えてる事がわかるみたい。」
「 そんなことないよ。私は汚れてる。けがれてるんだよ。ひどいもんさ。」
富士子はあやかちゃんに自分の心を読まれてもちっとも嫌な気持ちがしなかった。それはあやかちゃんが富士子に全く言の葉のやいばを向けてくる気配をみせなかったからだし、あやかちゃんはとても優しかったからだ。富士子のことをとても気にかけてくれてるのが富士子にはよくわかった。そんな人はとても少ないんだ。
「だから今は歩きながら話そー。舌が乾くまで話そうよ。これ美味しいよ。食べよー。」
あやかちゃんは木の実を富士子にくれた。
「 美味しい!」
「でしょでしょ。食べて。食べて。」
森の中に満月の光が差して美しく輝く。庭の木や街路樹とは違う森の中の木々は自由で伸びやかで暴れてるみたいに枝を腕みたいに振り回してる。自然な樹木の美しさに震えて富士子は恐ろしさまでも感じたのを今でもはっきりと覚えている。闇夜にそまれど歩みを止めることは無いんだ。辛くなって終わらない夜ならば全てを背負って憂いをまとい心に鬼を宿し、今の私にもう私は一人じゃないから。
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