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みっちゃんとの出会い
実は、私は自分の親に関する記憶がほとんどない。
物心ついた時には、私は透明な壁で囲まれた小さな家にいた。
小さな家にはいつも人間が何人かいて、明るい時間には水やご飯を用意してくれた。
部屋が汚れたら掃除もしてくれた。
小さな家の人間とは別に、毎日たくさんの人間が私の家に来ては笑顔で私を見つめてきた。
手を振ってきたり、家の壁をドンドンと叩く人間もいた。
私は興味本位でその人間に近づいてみたり、寝たふりをしたり、おもちゃで遊んだりしていた。
ただ、いつも同じくらいの時間になると、辺りは瞬時に暗くなり、みんないなくなってしまった。
少し寂しかったが、ちょうど眠くなる時間だったので、私は暗くなると同時に寝ることにしていた。
そんなある日のことだ。
私の家に3人が来た。真っ先にみっちゃんが近づいてきて、私をキラキラした目で見つめてきた。
私はその目に吸い寄せられるようにみっちゃんに近づいた。
みっちゃんは私を指さしながら、パパとママに何かを話していたが、透明な壁が邪魔で聞こえなかった。
そのあと、パパとママが家の人間に何かを話していた。すると、私は家の人間に抱えられて、3人のもとへ連れていかれた。
まず、パパが私を抱っこした。家の人間よりも少しごつごつしていて抱かれ心地は悪かったが、すごく嬉しそうな顔で私を見つめてきた。そして大きな手で私の頭を撫でた。
次はママ。とても温かくて柔らかくて、ママの抱っこは心地がよかった。ママも笑顔で私を見つめていた。
最後にみっちゃん。みっちゃんの抱っこはぶっきらぼうで、少し恐ろしかった。
しかし、私を離すまいと、必死に抱きかかえてくれているようにも思えた。
そして、みっちゃんはとてもいい匂いがした。みっちゃんの傍にいると、気持ちよく眠れそうだな、と思った。
とても楽しいひと時だったが、私はまた、家に戻されてしまった。
そして、透明な壁越しにみっちゃんを眺めていた。
再び、パパとママが家の人間と話していた。
(これは後から分かったことなのだが)偶然なのか必然なのか、私はみっちゃんと同じ日に生まれたそうだ。
それを知った3人が私のことを気に入ってくれて、家族として迎え入れてくれることになったようだ。
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