レイトルバーンの高嶺の花

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レイトルバーンの高嶺の花

「おはようございます! ルーナさん!今日もお綺麗ですぅ!」  朝、レイトを転移魔法で学園に送りレイトルバーンに転移するルーナ。彼女が彼を送り戻って来た時にいつも声を掛けるのが、受付嬢の獣人族の少女ミケ・ネーコミュウである。そして、毎日ように彼女を見かけてはその美しさから同じ事を毎日のように言っている。 「おはようございますミケさん」 「あのー……毎日の事で恐縮にゃのですが……」  ミケの手元には沢山の手紙の山。それだけではない。貢ぎ物のような綺麗にラッピングされた大小様々な箱に入った何か。そう、これは全てルーナに送られてきたものだ。彼女はギルド内だけではなく、他のギルドの男性にもとてつもなく人気がある。 「またですか……。毎日毎日飽きませんね……」  何時もの事ながら、これだけの物を送れる彼らは一体どんな財力をしているのか。そんな事を思いながら、ミケからそれを受け取る。正直、彼女としては邪魔以外の何物でもない。かといって、彼女の性格上捨てるという選択肢もあまり選びたくない。使えそうなものに関しては、ギルド内にいる女性団員に配ったりと出来るだけ捨てないようにしているのだ。  そして、一番困るのは手紙である。これも彼女の性格上は読まずに捨てるというのもあまりに忍びない。結局全て読む事になるのだが、内容は全て同じような事が書かれている。一度お食事でも、一目見た時から、運命を感じた、そんな内容ばかりである。  彼女はギルド内でスタッフの階級を持っている為、ギルド内では幹部扱いとなる。そして、叔父であるシルヴァとレイトが居ない時は優秀な部下として他のギルドに顔を出す事も少なくない。そうすると、必然的に彼女を見た男性達は彼女の美貌に惹かれ、毎日のように彼女に手紙や貢ぎ物といった物をレイトルバーンに送ってくるのだ。 「大人気ですのにゃ」  側から見ればそう感じる事でも、当事者の彼女からしてみれば迷惑この上ない。それを全て自分の部屋に運び終え一息つくと、まだ読み終わってすらいない山積みの手紙にため息が出てしまう。 「読み終わらない……」  一度捨ててしまえばと思った時もあったが、わざわざ自分の為にこうやって書いてくれる物に対してそれをするのも如何なものかと、結局は目を通してからでないと捨てられない自分がいる。  しかし、彼女の朝はまだ始まったばかりだ。これから、レイトの部屋を掃除して、依頼の整理や調書、やる事は沢山ある。とりあえず、彼の部屋から片付けてしまおうと彼から預かっている部屋の鍵を片手に男性寮へと足を運んだ。 「お、おは、おはようございます!」  男性寮に行くと、必然的に起きてきたばかりの男性の団員達と会う事も多くなる。彼らもルーナに対して何かしらの想いは持っていると言っても過言ではない。 「おはようございます。今日も頑張ってくださいね」  笑顔を彼らに向けると、男性の団員達は自然とやる気のバロメーターが急上昇する。本人にはその自覚はないが、自分の存在は男性の団員達のやる気を上げるものになっている。それこそ、レイトと長期任務に入ってしまっている時は、彼らはルーナがいない為、少しやる気を失っているとシルヴァも分かっているらしい。  そんな事とはつゆ知らず、借りた鍵を使い扉を開け、中に入ってその扉が閉められた時、団員達は嗚呼と声を洩らし、自分達も彼女に部屋を掃除してもらいたいと皆思う。  レイトの部屋は、彼自身が十七歳と年齢にしてみればかなり簡素な部屋だとルーナは思っている。それこそ、必要最低限の物しか置いていない。だが、一つだけ彼が沢山持っているものがある。 「相変わらず……凄い量の本」  見た目とは裏腹に、彼は魔法や武器の使用の解説、体術に関する本を有り得ないくらい読んでいる。ルーナ自身も本は好きだが、それにしても余りにも多いし、内容も十七歳の少年が読む内容ではない。彼女ですら、全く理解出来ない言語で書かれたものも数多く存在している。  好きな物に対してとことん追求していくのが、彼の良さであると思うし、彼の強さの秘訣なのだろうとも思う。細かくは分からないが、彼が部屋にいる時は大抵こういう本を読み漁っているのだろう。 「錬金術に関しては、途中で面倒になったみたい……」  綺麗に整頓されている本棚とは対照的に乱雑に本棚にすら入っておらず、床に積み重ねられた本がある。それが、錬金術についての内容が記されたものになるのだが、それに関しては途中で諦めたのか中盤くらいで栞が挟まれて、埃を被っている。  掃除をする上でここも綺麗に掃除したいのだが、触るなと言われている為に、ここだけはいつも埃を被ったような状態になっているのだ。 「まずはベッド」  彼が寝起きのままの状態になっている乱れたベッドの毛布や枕、シーツといったものを綺麗にしていくのだが、彼は寝相が悪くないらしく、乱雑というわけでもない。  一度全てを魔法で浮かせてシーツから交換するのだが、交換したシーツや乱れた布団を直す時に、匂いを嗅ぐ癖が彼女にはある。彼女はレイトの匂いが好きらしく、駄目だと分かっていながらもやってしまう。  普段も転移魔法を使う時や馬車に乗った際に、密着とまではいかないがかなり近い状態になる事も多い。その時に、彼の匂いを無意識でも嗅いでしまう自分がいる。
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