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「お兄ちゃん、お嬢ちゃん」
私たちは勢いよく後ろを振り向いた。
呼び込みのお婆さんが私たちの後ろに立っていた。
「二人があまりに遅いから、お母さんたちから案内してくれって頼まれたんだ」
「「お願いします!!」」
私たちはお婆さんに頭を下げた。
「私たちもお願いしますー!」
女子高生たちもついてきた。
お婆さんはさっさと前を進んでいく。お化けも特に驚かして来なかったので、お婆さんの背中だけを見てついていった。
しばらくすると、少し広いところに出た。
「うわっ」
お兄ちゃんの驚く声が聞こえた。
振り返ると、女子高生の集団にお兄ちゃんが飲み込まれていた。
私はお婆さんの方を向き、「ちょっと待ってください!」と伝えた。
お婆さんは頷いた。
そして、女子高生の集団から光る指輪をつけた方の腕だけが見えているお兄ちゃんを私は頑張って引っ張り出した。
今思うと、なぜ何もない広場につく前の狭い通路で女子高生は止まっていたんだろう。
「ありがとう」
「ふう、すみません、もう大丈夫です」
私たちはお婆さんの方を向いた。
でも、お婆さんはどこにもいなかった。
「え、え、なんで?待っててって言ったのに」
「…ねぇ、あれ」
広場の突き当りの壁は柵になっていて外が見えた。外の遠くの方でお婆さんが見えた。
「…なんで?」
「だって、割と距離ある、よね」
お兄ちゃんを引っ張るのにそこまで時間はかかってないはずだった。
私たちは血の気が引いた。
物理的にも時間的にもあそこへの移動は不可能なはず…。
そこからの記憶はあまりない。
いつの間にか女子高生たちもどこかに行っていた。
私たちはお婆さんが怖すぎて周りのお化けを一切気にせず早歩きでゴールへ向かった。
外に出ると、お婆さんはまたいつものように「よってらっしゃい見てらっしゃい」と呼び込みをしていた。
「もーやっぱり遅かったじゃん」
笑っているお母さんたちに私たちはダッシュで抱き着き、「お婆さんが、お婆さんが一番、怖い、やばい、消えた、消えたの!」と必死に怖さを伝えようとした。
ねぇ、お婆さん、どうして私たちを置いて消えたの?
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