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僕は強くなりたかった。
物心つく頃から、僕は兄さんの背だけを追いかけて生きてきた。それは未来永劫変わる事はないと、心の底から信じていた。
あの``約束``をするまでは―――。
「もう無理だよ母さん……」
「久三男ォ!! お前男だろォ!! 腹筋ただの五十回しかできてねぇじゃねぇかァ!! 話にならんぞそんなんじゃァ!!」
「そんなこと言ったって……これ以上お腹持ち上がんないもん……」
「たく俺がテメェんときゃあ五百回は軽くこなしてたぞォ!!」
「それは母さんがただ怪物なだけじゃないかなぁ!! 一応、僕まだ五歳だからね!?」
僕の母さん、流川澄会の前で、なめくじみたいに床にへばりついて動こうとしない僕、流川久三男は今日も終わりの見えないロードワークに苦しめられていた。
畳の匂いが心地良い。母さんの怒鳴り声がほんの少し小さく聞こえるくらいに、極限まで痛みつけられた僕の身体が、心なしか癒されていくのを感じる。
これを、大地の力、なんて言うんだろうか。
「御託はいいィ!! それにお前、最近魔生物狩りのノルマ、全然達してねぇぞォ!! 昨日なんて一体すら狩れてねぇじゃねぇかどういうことだァ!!」
母さんの怒鳴り声が、残酷にも僕を現実に引き戻す。現実に引き戻されたという絶望と、母さんの恫喝のダブルパンチが、僕のガラスメンタルを容易く砕いた。
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