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「そんなの無理だよぉ……魔生物なんて怖くておしっこちびっちゃう」
「何がおしっこちびっちゃう、だァ!! 男なら小便垂らしながらでも向かい撃つのが男ってもんだろうがァ!!」
「母さん文法おかしいよ!! なんかカッコいいこと言ってるように感じるけど、男って単語二回連続で言ってて、かえってわけわかんない内容になってる!!」
「なんでテメェはそうワケの分からん口答えすんだァ!! テメェの兄貴を見習えェ!! 黙々と腹筋千回してんぞォ!!」
そういわれて、床にへばりついた顔を、兄さんの方に向き直す。
僕の隣には一〇二一、一〇二二と呟きながら、ひたすら上体起こしを続ける兄さんがいた。シャツは汗でびしょぬれ、顎や顔から滴る汗が、道場の床に滴る。
兄さんは、本当に戦いに関しての才能がものすごく秀でていた。
魔生物も一日にものすごい数を狩ってきたり、僕じゃ到底真似できないような基礎体力作りのメニューを速攻でこなしたり、それだけじゃ物足りないのか、余った時間は、母さんとずっと模擬戦をこなしたり。
武器の扱いの呑み込みも速くて、あの母さんですら唸らせたほど。
本当にすごい。僕なんか、魔生物狩りとか、模擬戦とか、それ以前に基礎体力すら、まともにできた試しがない。
兄さんは既に上体起こしを千回こなしている中で、僕はたったの五十回。流川家じゃ、五歳の頃には上体起こし程度、少なくとも百回以上はできないと基礎体力が全くなってない奴扱いされる。
つまり、その程度の事も速攻でこなせない無能ということと同じなんだ。
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