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「久三男ォ!! 何してるゥ!!」
「ご、ごめん母さんッ」
「早く流川の平均基礎体力をつけろォ!! 基礎体力がなってねぇと、武器もロクに扱えないんだからなァ!!」
武器、か。
僕は既に悲鳴をあげ始めている腹筋に、お灸をすえる勢いで上体起こしを再開しながら、ふと考え事に頭を巡らせた。
本当は僕も兄さんと同じ、``剣``を持ちたかった。
でも敵を目の前にして戦うのがどうしても怖い上、剣術のセンスが全然無くて、遠くから敵を狙い撃てる``弓``に妥協した。
それが第一の理由だけれど、本命としての理由は、もう一つあった。
兄さんが剣で敵と接戦するなら、僕は遠くから、敵を目前にして戦う兄さんを支援する。そういう意味合いでも、僕はあえて弓を持つことに決めたんだ。
前衛でなくても、弓が使えれば戦場には立てる。だからこそ戦場を群雄割拠するであろう兄さんの後ろで細々と戦果を挙げて、兄さんの、延いては流川の戦いに貢献する。そう信じていたからこその、一大決心だった。
でもそれは、基礎体力という名の壁の前に、儚く粉々に砕け散った。
スタミナの怪物である兄さんは、一日中魔生物と死闘を繰り広げてもケロッとしているくらいの体力と気力を持ち合わせているが、僕は精々頑張っても三、四時間が限界だった。
三、四時間で体力切れを起こす人が、一日中魔生物と殺し合いができる人を支援する。全くもって現実的とは言えない。
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