プロローグ:十年前の約束

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 実を言うと、僕は兄さんみたいに強くなりたかったという想いと同じくらい、``研究``が好きだった。  本を読んだり、論文を書いたり、色んな素材から道具や武具、装置を作ったり。  研究、開発は僕にとって最大のオアシスであり、最高の趣味だった。母さんはプラス自主練を何かしろと言っていたけれど、メニューを終えても余裕があるときは、その時間を全て趣味に費やしていたくらいに、僕は研究が好きだった。  ダメなのはわかってた。ただ単に現実から逃げているのも分かってた。  でも僕の中に際限なく湧き上がる``好き``という感情を、僕は抑えることができなかったんだ。  自分の研究をもっと良いものにするため、僕は余った時間を久々(ひさひさ)おじさんの所に通っていた。  久々(ひさひさ)おじさんっていうのは、僕より一世代前、ラボターミナルという、建物そのものが研究室みたいな所を一人で管理していた人のこと。  当時の僕はまだ見習いみたいなもので、久々(ひさひさ)おじさんの手伝いをする代わりに、ラボターミナルの設備を借りて自分なりの研究・開発を行っていた。  そこには色んな実験装置や、論文や、書籍が沢山詰まってて、最新型のコンピュータから最新型の実験器具など。  ラボターミナルにあるもの全てが時代の最先端をいくものばかりで、僕にとっては今も昔も、宝物庫以外の何物でもない場所だ。  久々(ひさひさ)おじさんは、僕に色々な事を教えてくれた。それだけじゃない。最先端の実験器具や装置で、実験や開発もさせてくれた。まだ見習いでしかない、こんな僕に。
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