あの子は、いなくなってないんだよ

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 番組名は気にしてなかった。CMが流れるが、僕の勤め先の会社だ。お客さまやテレビ局さまには、本当に申し訳ないが、仕事を思い出す。  しかし、お客さまとCMの会話で盛り上がったりするので、しっかり、見ていた。 「ごちそうさまでした」  莉央(りお)の声がした。白く丸い皿の上にあったトーストも、グラスに入っていたジュースもなくなっている。  手伝ってあげたい。でも、嫁さんからは、自分でやらせるように言われている。 「莉央(りお)、自分でお皿とコップを洗おうな」 「うん」  お皿の上にグラスを置く。莉央(りお)は壁沿いにあるシンクまで、そろりそろり、と歩いていた。  爪先立ちになり、ゴム手袋をつけていた。お皿とグラスをスポンジで洗う。スポンジには、嫁さんが、前もって食器洗い洗剤が含ませてある。  やけに泡立つが、テレビが気になるので、スルーした。 「お父さん、すすいでも、洗剤取れないよ」  中堂(なかどう)監督が話し始めたのだ。聞こえない振りをしたいが、渋々立ち上がった。シンクに早足で近づく。  莉央(りお)をそっちのけで、お皿とグラスを水道ですすいで、備え付けの布巾(ふきん)拭いた。  適当な場所にお皿とグラスを裏返して置く。 「お父さん、お皿とコップ置くのそこじゃないよ」 「はぁ?」  全く! 苛立ちを隠さず、地響きを鳴らすように、ソファーに戻って、テレビを見ていた。 「お父さん、なんかコワい」  
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