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帰宅すると玄関前に奇妙な出で立ちのサトシがコケシを握りしめて俺を待っていた。
『絶対にお前を許さない……!』
そう叫ぶなり俺の髪を掴みブチブチッと引きちぎる。
『これでお前は呪われて死ぬ!』
人の貴重な髪の毛をコケシに巻きつけるサトシ。
親友の意味不明な行動に俺はただ呆然とするしかない。
どこからともなく画鋲を取り出しコケシに突き刺す様子から“もしや丑の刻参りのつもりか?”と聞くと『そうだ』と奴が頷いた。
なるほど。体にシーツを巻き付けているのは白装束の代わりでコケシは藁人形、画鋲は五寸釘なんだな。で……頭のカラフルなバースデーハットはろうそくを突き立てた鉄輪かな?
しかし、そんないい加減な格好では呪い返しでお前が死ぬぞ。
「どうしたんだサトシ。今度は何に影響されてそうなったんだよ?」
残念な親友は半年に一度の割合で奇行に走る。
前々回は俺を巻き込み『銀河系のお姫様になれ』とピンクのシースルーネグリジェを強要したあげく最終的にキスまでされた。
まぁ、その件については思い出したくもないけど、サトシとは腐れ縁で、もはや面倒を見るのが自分の役目のように感じている。
今回はどうやらホラーにハマったらしい。全く、やれやれだぜ。
「……笑ってんじゃねぇよ。俺の“カズハ“を返さねぇと本当に呪ってやるから」
「カズハ? あのさ、役に入るのは台本と趣旨を説明してからにしろよ」
「しらばっくれんな! お前が彼女を盗ったんだろうが! カズハをどこにやった? 今すぐ返せ!」
奴が俺の胸ぐらを掴み顔を突き合わせた瞬間、それが演技じゃないと気付いた。
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