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トライアングルな関係
――ピン ポン パン ポーン
まもなく~~~営業終了時間と~~~なります~~~
ダンジョン二日目が終了した。
アナウンスになんとか起き上がると、すごすごと三人は帰っていった。
「エレナ、アンタどーすんのよ」
トボトボと歩いているとディアーナが口を開いた。
「え? ワタシデスか? ワタシはヒカル氏の所有者デスから一緒にいますよ? 逆にディアーナさんは? どこかへ消えてもらえますか?」
「はーあ? いい度胸ね! ってヒカル、アンタはどー思ってるのよ。アンタが決めなさいよ!」
「え? 俺? 巻き込むなよ~一応エマに聞いてみるけど」
昨日の反省もあってかディアーナも今日は騒がず『盗賊の宿屋』に帰ってきた。
「エマ~ どーだろう? もうひとり相部屋ってOK?」
「え? もうひとり? しかも女の子なの?」
「う、うん……ダメかなあ? お金無いもんで、もう一部屋とか……厳しいんだけど……」
「ウチは連れ込み宿じゃないんだけど?」
「連れ込み宿? なにそれ」
「そ、それは……男と女が……あーして、こーして、ナニして……」
「エマ、どーした? 顔が真っ赤だが」
「あーもういいよ! OK! ヒカルからはなんかこう、ギラギラしたものをまったく感じないから大丈夫でしょ」
「お、おう。まーな俺、巨乳専門だしな」
「ってソコなの?」
三人から一斉にツッコまれるヒカルであった。
「それでは作戦会議を開きまーす」
その晩、宿屋の一階で食事をしながら、その会議は始まった。
「はい! 委員長!」
「ってディアーナ、誰が委員長なんだよ」
「え? ヒカル委員長じゃないの? 班長? それとも書記局長?」
「あー、もういいよ! で? 何?」
「はーい委員長! 左側のベッドは私とヒカルで寝ればいいと思います!」
「あっ ズルいデスよ抜けがけは! ヒカル氏と寝るのは所有者であるワタシ、エレナと決まっています」
「………オマエら。今、そんな話しじゃねーだろ」
「じゃ、どんな話よ。も、もしかしてエマ? あの泥棒猫と寝るっていうの? そーいうことなのね!」
「え? なに? ボクのこと呼んだ?」
「呼んでない! てかエマ、どっから出てきてんだよ! もう誰が誰だかこんがらがるからアッチ行っててくれよ」
「はーい。じゃ、酒、ここ置いておくねっと」
「って誰が酒頼んだんだよ!」
ディアーナはエレナを、エレナはディアーナを指差した。
「あははは……ま、まあ女神のエネルギー源は酒だからねー」
「え? マジで?」
「デスねー」
――プッハァ~
ふたりは一気に飲み干した。
「おかわりー」
「ってエレナは未成年だろーが!」
「はーあ? マジデスか? 死にますか?」
エレナの目はマッハで座っていた。
「い、いやあ……はは。み、未成年者はね。お酒飲んじゃいけないんだよ?」
「でーすーかーらー! ワタシはヒカル氏より年上デスがなにか?」
「え?」
「ケッコー上よね」
「ディアーナさんは黙っていてくださいっ」
「はーい~」
「そ、そうなんだ……っていうか、そーいう話じゃなくて! 今後のダンジョン攻略について考えなくちゃだろ!」
「なーんだ……そんな話キョーミなーい」
「はあ? なんでだよ! それだろ、それこそが俺たちに課せられた課題なんだろ?」
「いやー、まーそれはそーだけど、別に面白くないんだよねアレ。防衛とかさ。来る敵をバッタバッタとなぎ倒すんでオーケーじゃない?」
「デスね」
「あ、エレナまで!」
「まあ次はご安心ください。偽蝕套に捕捉されなければ大丈夫。ワタシが一発で冒険者共をやっつけますので」
「ほほう。心強いな。で? どーやってやるんだ? 死魂剣も使えないんだろ?」
「確かに死魂剣を使えないのは痛いデス。ですが大丈夫、ワタシの暗黒魔法、滅死消去で消してやるのデス」
「ふむふむ。念の為、その滅死消去とやらを詳しく」
「同一空間内のあらゆる生物をもれなく13体まで消滅させるのデス!」
「えっと……それってもちろん消す相手を選べるんだよね?」
「13人より多ければ選べますが、基本的に死の前にはみな平等。誰も死から逃れることなど出来ないのデスよ。ハッキリ言って無敵デス!」
「……う、うん……ちょっと待ってよ……。えっと、うちらが……3人。そして冒険者が4人として……あわせて……7人……全員……死ぬの……かな?」
「デスね」
「ダ、ダメじゃないか~!」
「大丈夫デス。女神は死にませんからっ」
「そーいう問題じゃねーだろ! それに……」
「はいざんね~ん。エレナちゃんも死ぬんだよね~」
「あっ」
ヒカルは思い出した。自分は左手、ディアーナはお尻にそれぞれ残ライフの刻印が現れる。
「そ~いえば。エレナの刻印って……どこだ? 消してねーぞ?」
「な、なんの話デスか?」
「あー、どうもコイツの女神として降臨すると運命共同体になるみたいなのよね」
「運命共同体?」
「そ。つまり、コイツが死ぬと私達も死のカウントダウンされてしまう。それを体に刻む刻印が、エレナ、たぶんアンタのカラダのどっかにもあるハズ」
「ほ、本当ですか! ど、ドコですか! ドコにあるっていうのデスか!」
――バッ パッ ズサーッ
「お? 全身黒ずくめと思ったら中は違うのか。って、おいエレナ! 何してんだよ!」
エレナは着ている服を次々に脱ぎ始めた。目に見える部分の服は黒いゴスっぽい衣装だったのだが、下着全般は白かった。
「は、早く、その刻印とやらを見つけなさいよ!」
ついには下着だけになってしまった。
「さあほら! ドコにもないじゃないデスか!」
「おっかしいわねーとりあえずソレも脱ぎなさいよ」
「こ、これ以上はちょっと……」
「ふむふむ、なるなる、ほうほう〜これわこれで、なるほど……悪くないな」
言い争う二人をよそにヒカルは舐め回すようにエレナのカラダを見ていた。
「おいヒカル! アンタ、ロリっ子に興味なかったんじゃないのか?」
「え? い、いや……お、俺は刻印を探してるだけだけど」
「ホントかなあ〜」
「あっ あったゾ」
「え?」
それはヒカルがエレナの足を持ち上げて太ももからつま先までガン見していたときだった。
――18/30
刻印はあった。足の甲の部分に。
「さあ、ワタシの足をお舐めなさい!」
「え?」
「え? そーいうことじゃないのデスか?」
「いやあ〜別にそーいうプレー的なものではないんだけど……ってヒカル! なに舐めようとしてんのよ! Mなの? ドMなの?」
――はぁ はぁ はぁ
「ハッ な、何をしていたんだ俺は!」
「フンッ、白々しいんだから。早く消しなさいよ」
「あ、ああ〜」
ヒカルはエレナの足を撫でた。
「あんッ」
太ももからスヌヌヌヌゥ〜っと。
「消えた……ほ、ほんとうに死ぬって……いうのデスか?」
「あ、ああ。どーやらそーらしいんだ。だから……考えないとだろ? 生き残るために」
「そ、そうデスね……」
少しその場にしんみりとした空気が漂った……ことはなかった。
「ってーことで! パァーっと飲むのよ!」
「デスね!」
結局、飲んで、食って、酔いつぶれたふたりをひとつのベッドに押し込んだのはヒカルだった。
「俺、ゼッテー酒は飲まねー」
そう心に決めたヒカルだったという。
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