え?女神のお尻にアレが?

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え?女神のお尻にアレが?

 ――29/30 「ん? なんだコレ?」  ヒカルがふと左の手を見ると手の甲に『29 /30 』という数字が浮かびあがっていた。それが緩やかに点滅してる。 「あー刻印ね。左から右に三回こすれば消えるよ」 「あ、ホントだ」  言われたとおりこすってみると、それはボワーンっと光ったあとに消えた。 「って、そーいうコトじゃなく、数字の意味はなんなんだよ?」 「それは魂の残数ね。ゲームで言うところのライフ? ダンジョンマスターには階層数ぶんのライフが付与されてるの」 「え? で? ライフがゼロになるとどーなる?」 「死ぬんじゃない? 魂が無に還る感じ?」 「うおぉおおおマジかよ。俺、不老不死じゃないのかよ。そこもチートなしなの?」 「あったりまえじゃないの。人間、死んだらお終いよ。せいぜいガンバるコトね。死なないように~」  ディアーナは服の乱れを直しながら、いい気味ね! とばかりに笑った。 「そっか……ディアーナ、オマエも大変なんだな」 「何がよ」 「いや、オマエのお尻にもあるぜ? 刻印」 「へ? またまたあ〜悔しいからってウソはダメよ。ウソはつかないでよね! 地獄に落とすわよ!」  強がりを言いながらも、ディアーナは自分の尻を見ようとカラダをよじらせた……が、もちろん見えるはずもない。 「な、ないじゃない! テキトーなコト言わないでよね!」 「あるってば。さっき見たし。別に嘘つく意味ないし」 「ほ、本当なの? ふ、拭き取って! 早く拭き取らないと確定しちゃう」 「確定?」 「そーよ。本来、女神にあるべきじゃない刻印が確定すれば、あんたらみたいな土塊(つちくれ)人間に堕ちてしまうのよ」 「よくわからんが、それなら自分で拭けばいいじゃねーかよ」 「刻印を消すのはダンマスじゃないとできないの!」  やはりよく意味が分からないが、ディアーナがかなり慌てていることは分かった。 「ほほう。そしたらケツをコッチにつきだせ! そうだなあ〜四つん這いになれ。よく見えないからなあ〜」 「こ、こう?」  ディアーナは相当焦っていたのか、言われるままに四つん這いになって尻を突き出した。 「うほっ、イイね~いい眺めだ」 「ってヒカル! ふざけてないで早くしなさいよ!」 「あ、そんな口のききかたしていいのかな~? どーしようかなあ〜やめようかなあ〜」 「お、お願い……早くして……」 「お、おう……分かったよ。いくぞ!」 「や、やさしくしてね」 「お、おう……」  ヒカルはなんだかドキドキしながら、ディアーナの尻に浮き出た刻印を拭き取った――あと  ――サワ、サワ、サワサワサワサワ 「うむ、乳はともかく。お尻はいい感じだなあ〜」 「ちょ、ちょっとあんた! 拭き取れたんならやめなさいよね」 「ちっ 褒めてやったのに」 「で、でも確かに感じたわ。刻印が消えるのを……な、なんでよ、どーして私まで……」  ディアーナはドコからともなく紙を取り出すと食い入るようにそれを見た。 「……こ、ここはなんて書いてあるか読めないし」 「ん? なに見てんの?」 「これよ、アンタになんかどうせ読めないでしょうけどね」  それはさっきの契約書だった。 「なになにい~ここかな?」  一、…………………………………………  一、…………………………………………  一、契約者により召喚された女神は契約者と運命を共にする共同体である。  一、召喚女神は、契約者が消滅するとき、共に消滅するものとする。  一、…………………………………………   「アンタ、なんで読めてんのよ」 「いや、だってココ日本語だし」  契約書とやらの大半は意味不明な文字が並んでいたが、その部分だけが日本語だったのだ。 「へ? そ、そーなの??? なんで日本語なんかで……というか……ってことはなに? アンタが死んだら私も死ぬって、そーいうこと?」 「う、うん……そんな感じに読めるね」 「フ、フザケンナ! このくそニートはともかく、なんで女神の私が死ななきゃなんないのよ。死ぬならこいつひとりで死ねばいいんだわ。うんそうだな。そうしよう。毒殺? 絞殺? あ、燃やせばいいんだ」 「おい女神!」 「な、なにかしら?」 「オマエの心の声的なのダダ漏れだぞ?」 「いやいやーそんなはずは……って、え? マジで?」 「うむ。それにだ……たぶん、俺を殺せばオマエのケツの数字も減るんじゃねーの?」 「ぐっ……そうか……どーしよう! どーしたらいいの!」 「どーしようって……戦って勝つしかねーんじゃねーの?」 「だ、だってヒカル! アンタ弱いじゃない。死ぬじゃない。ダメじゃない!」 「そ、それはそーだけど……っていうか、オマエ! さっきはオマエに殺られたんじゃないか! あのファイヤバードはなしな! あんなんブッ放されたら即死だろ。もっと弱い魔法撃ちやがれってんだよ」 「あれが一番弱い魔法よ。私の」 「へ?」 「だーかーらー! 私の炎属性が強すぎてフツーの魔法打ってもあのくらいの威力なのよ。だから天界だと魔法使わせてもらえなくて、召喚されて、やっと使えると思ったのに、発散できると思ったのに……」  落ち込んでいるディアーナを見て、ヒカルもまた神妙な顔になった。しかし、ディアーナを気遣っている……というわけではなく   「……なあ、ディアーナ。オマエって……もしかして……ハズレ女神? 胸も小さいし」 「は~あ? ハズレっていうな! あとチッパイとかも言うなし!」 「いや、チッパイは言ってないが……」 「うっさいうっさいうさい! と、とにかくチッパイって言うの禁止!」 「わーったよ。とりあえず……なんか作戦を考えなくっちゃな」
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