1. 幼馴染

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「高水、すげえよな」  隣で声がしたので、光軌はやっと裕から目を離した。  いつも半笑いを浮かべて光軌の隣にいる、同じ陸上部の相原(あいはら)だ。 「すげえと思う。……俺、そんな見てた?」 「見てた。お前、美術の時間いっつも高水のこと見てるよ」  相原は意地悪そうに笑う。  正直光軌には自覚がなかったので、そうかな、と相原の言葉に首をひねった。  真っ白なスケッチブックが並ぶ中に、真っ黒に書き込まれた絵があれば、それが目に止まるのはごく自然なことだ、と光軌は思う。 「お前と高水、たまに喋ってるよな」  相原はちらりと裕を見る。 「そうだな。幼馴染だから」 「あ。そういえばそれ誰かから聞いたな」  驚くでもなく、いつだっけ、と相原は天井を見上げた。  実際、たまに喋ってるとはいえ、光軌はいつも陸上部の面々とつるんでいて、裕と話している時間はほぼ無い。  逆に、「たまに喋ってるよな」と指摘する相原の情報力には感心する。  相原はそのルックスの良さから、女子と仲良くしていることが多い。仲良く、というのはもちろん、恋愛関係や、肉体関係も含め、だ。  いつか女子同士の修羅場に揉まれて刺されるのではないかと、光軌は本気で心配している。  そういうこともあり、相原のところへ自然と学校中の噂や情報が集まってくるらしい。  彼女もおらず陸上のことが頭のほとんどを占めている光軌には、一体どうしてそんなことになるのか想像もつかない。
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