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1. 幼馴染
高校の美術の授業など、狭苦しい教室から解放されるだけの、息抜きの時間に等しい。
そもそも、画力など微塵もない。
海津光軌は同じクラスの陸上部と固まってスケッチブックに向き合う振りをしていた。
もちろん光軌に限らず、大体が仲の良いグループで固まってひたすらおしゃべりをしている。
五限にあるこの美術の時間は、もはや昼休みの延長みたいなものだ。
なにかを暗記することも、先生に質問されることもない。鉛筆を動かしても動かさなくても、とりあえず成績がつく。
それが美術という授業。誰もがそう認識していた。
その中でも、ただただ鉛筆を動かし続け、紙の上になんとも高校生離れした画力で絵を描いている生徒は、どうしても目立つ。
誰と群れることもなく、ただ、ひたすらに描いている。
その生徒は、光軌の幼馴染、高水裕だった。
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