最終夜

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女将の話しは続いた。 「香の母親は、そのあと香の後を追うように身を投げました」 「「「「え」」」」 ーー1919年 夏ーー 「香ぃいいいい!!」 香が笑って滝の中へと飛び込んだ。周りの村人達は驚きのあまり唖然としている。滝の大きな流れる音で、香が飛び込んだ音すらかき消されていた。 「香ぃいい!」 香の母親は、滝つぼまで歩み寄ろうとすると、ガタイの良い男に取り押さえられた。 「奥さん、危険です。離れてください」 「何、馬鹿な事言ってるんですか?! 香が、娘が飛び込んだんですよ!? 落ち着けれるわけないでしょ!」 香が滝に飛び込んだショックのあまり、村の風習を拒絶するような言い方をしてしまう。 「鈴華(すずか)よ。落ち着きなさい。香は、自分の意思で龍神の元へ向かったんじゃ。凄い良いことをーー」 「何を言ってるんですか? 今まで黙ってましたが、こんな風習可笑しいわ! まだ年若い娘を神に捧げる? そんな馬鹿げた風習なんかなかったら、香は……いえ、他の女の子達も生きていたのに!!」 パァン!! 暗闇に鋭い乾いた音が響いた。その音を発したのは、香の母親だった。村長がビンタを喰らわしたのだ。 「罰当たりな事を言うじゃない!!」
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