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序章
ーー1919年 夏ーー
深夜帯にもかかわらず、多くの村人達が役場の前に集まっていた。役場の中央には、まだ年若い女の子数人が横に並ばせられていた。
服装は白い着物を着せられ、白い布で目隠しをされていた。女の子達の両親だろう人達が、嘆きの声を小さく出している。
「なんで……。なんで、今年は私の子なの?」
「神様、どうか嘘だと言って下さい」
そんな親達の悲痛な叫びとは裏腹に、村長らしき人物が村人達の前に現れた。
「ゴホンっ」
村長の一つの咳払いで、ざわついていた周囲が一瞬にして静かになった。村長は村人達、一人一人の顔をゆっくりと見渡し、それから口を開いた。
「これより、川の神による儀式を開始する」
村長の言葉により、若い女子の両親ーー特に母親が泣き崩れた。これから行われようとしているのは、この村にとって大切な儀式。
つまり、【人柱】を用意し村の山の中にある滝つぼへと叩き落とすというものだった。
川の神に若い女子を捧げるとは、今年も厄災が起きませんように、という意味がこもっていた。
若い女子達を中心に、村人達の行列が山へと向かう。先頭には若い男子二人が松明を持って、道を照らして進んでいた。
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