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第三夜
空は荒れていた。雨は降らずとも、どす黒い雲がとぐろを巻いて滝の上にとどまっていた。
「もうじきよ……もうじき全てが……」
少女、香は空を見上げて口角を上げた。しかし、彼女の表情はどこか苦しんでいるのを誰も知りよしもしない。
* * * * *
四人は旅館の外へ出ていた。強い強風が髪や頰を痛めつける。
「なんで急に風が?!」
「恐らくですが、香の力だと思います!」
大きな声を出さないと、互いの声が聞こえないほどの風だった。
「とにかく、滝の方に急ごう! 月さん案内頼みます!」
「こちらです」
月の案内に従って、森の中へと入って行く。強風のせいで木々が大きく揺れている。いつ倒れてもおかしくない状態だ。だけど、今はそんな事を思っている暇はない。“香”の魂を鎮めなければ、停電以外にもとんでもないことになるかもしれない。
四人の足取りは速くなる。人口道を通り過ぎると、立ち入り禁止の立て看板が現れた。しかも、立て看板が二つに割れて地面に倒されていた。
「……」
四人はこの先の道を見つめた。
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