第三夜

1/15
87人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ

第三夜

空は荒れていた。雨は降らずとも、どす黒い雲がとぐろを巻いて滝の上にとどまっていた。 「もうじきよ……もうじき全てが……」 少女、香は空を見上げて口角を上げた。しかし、彼女の表情はどこか苦しんでいるのを誰も知りよしもしない。 * * * * * 四人は旅館の外へ出ていた。強い強風が髪や頰を痛めつける。 「なんで急に風が?!」 「恐らくですが、香の力だと思います!」 大きな声を出さないと、互いの声が聞こえないほどの風だった。 「とにかく、滝の方に急ごう! 月さん案内頼みます!」 「こちらです」 月の案内に従って、森の中へと入って行く。強風のせいで木々が大きく揺れている。いつ倒れてもおかしくない状態だ。だけど、今はそんな事を思っている暇はない。“香”の魂を鎮めなければ、停電以外にもとんでもないことになるかもしれない。 四人の足取りは速くなる。人口道を通り過ぎると、立ち入り禁止の立て看板が現れた。しかも、立て看板が二つに割れて地面に倒されていた。 「……」 四人はこの先の道を見つめた。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!