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最終夜
旅館に戻ると、みんな鈴蘭の間にいた。女将から今回の事件について話しを聞かされた。
「この村には、かつて人柱を使った風習がありました。十六になった少女を数名、あの滝に連れ行き、少女達の母親が自分の子を背中から押して、滝の中へ沈めるという……。そんな風習があったんです。しかし、香は違う形で滝へと沈みました」
「自ら身を投じたんですよね?」
真人が言った。
「すいません。その話しは月さんから聞いています。彼女がどう思って滝の中へ飛び込んだかも」
「そうでしたか……。でも、これは知りませんですよね?」
「え、まだあるんですか?」
真矢が聞き返した。
「一つだけですよ。自分の母にはこう思っていたみたいです」
月も初耳だったのか、真人達と一緒に固唾を呑んだ。
「『お母さん、ありがとう、さよなら』と、悲しげに笑っていたみたいです」
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