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重たい雲と雨上がりのギター弾き【フル】
青に青を塗り重ねるように彼女が歌ってる。
残念だ。空が青けりゃなお良かったのに。
さっきからぼくは橋のたもとで何食わぬ顔して彼女を待ってる。
橋の欄干を時々かるく膝で蹴りながら。あまりつよく蹴ると膝が痛いから。
灰色に灰色を塗りかさねたような重たい雲が、新学期の黒いランドセルのように、その黒さと重さを増す。
雲は今にも地上に落ちてきそうに空にぶら下がり、ランドセルは小学生の肩からずり下がる。
ますますぼくは、こんなところで彼女を待ってることがじれったくなって我慢できなくなって、終業のチャイムみたいに彼女を呼ぶ。橋の真ん中に彼女がいる。
「かすみ〜、早く帰らないと雨が降りだすぞ〜」
彼女はただ振り返って、ただにこっと笑って、歌ってる途中だからまだ帰らない、というふうな顔をして、たった今まで笑ってた顔をふくれっ面に変えた。
「帰りたきゃ帰ればいいでしょ!」
「雨だよ、雨、雨」ぼくは取り繕うように空を指さした。
人に向かって指をさすんじゃねーよ、といった顔をして、ますます黒に近づいていく灰色の重たい雲がぼくを睨みつけた。
ぼくをめがけて今にも落ちてきそうなほど前のめりに睨み続けていた。
遠くでくぐもった雷の音がする。辺りの気配が水の粒子で濁り、彼女の歌うおたまじゃくしが空気の波を泳いでる。空気を振動させた縦波を、へびが横ばいで移動するように、気取ることなく優雅に泳いでる。
雷の音には、はっ、とするような派手さはない。トイレを閉め切って、中で怒鳴ってる人の声を電話で聞かされてるような音だ。
ぼくはかすみに訊く。
「傘もってんの〜?」
「な〜い」
「雨降るぞ〜」
「雨が降ったら濡れればいいわ」
なに言ってんだか。彼女が『雪山讃歌』みたいなことを言ってる。俺たちゃ町には住めないから、雨が降ったら濡れればいいさ、みたいに。
町に住み家に住めば雨の日は濡れることもないのに、山の中にテントを張り山男は雨が降ったら濡ればいいさ、と歌う。
彼女は山男、いや山女でもない訳だけど、山できたえた男意気とでもいうようなストイックなところがある。彼女にしてみりゃアーティスティックって言い換えてもらいたいんだろうけど。ぼくは言い換えてやらない、意図的に。
山の天気のように心がころころと変わるのも『山男の歌』の歌詞にある、山男が惚れてはならない娘心とおなじだ。彼女にはぼくもよく振り回されている。
くぐもった雷の音が連続して聞こえる。さっきより音が大きくなってる。どれだけトイレの中で怒鳴ってんだろう。
やがて雨が降る。天気予報士でなくてもやがて雨が降ることはまちがいない、と言い切れる。しかも最近の夏の天気も山男が惚れちゃならない娘心みたいにころころと一瞬にして変わる。夕立のような風情は最早ない。パニック映画のようなゲリラ豪雨が襲ってくるんだ。
積乱雲がもたらす現象としてはどちらもおなじものなのに、程度を知る夕立は災害を起こすことはないが後者は程度を知らず、過去に『新語・流行語大賞』にノミネートされたことに調子にのってか災害を起こす。
ゲリラ豪雨の恐れがあることは、朝のニュースで正真正銘の本物の天気予報士から聞いたからまちがいない。
かすみはバンドのボーカルをやっている。
高校の軽音部に所属しながら、一方で大学生や社会人が混じったアマチュアバンドの紅一点のボーカルとして活動しだした。ついこの間からの話だ。
彼女は軽音部でギターを弾いているが、ぼくに言わせりゃ弾いてるうちに入らないと思う。コードも覚えてないからタブ譜を見て指の位置を確認し番号で覚え、曲に合わせてそれを暗記して音を鳴らしているだけだ。ピアノの鍵盤にドレミファソラシドとマジックで書いて、その文字をみて弾いてるみたいだ。それじゃあ一向に上手くならない。
あれだけストイックなところがあるのに、なんでもっと練習しないのかな、と思うんだけど。そこらへんはやはり向いてないということなんだろう。
人間誰しも向き不向きがある。
ぼくはギターが弾ける。ギターを弾き始めたのは小学生の頃でそれからずっと弾いているので、ギターに関しては少しばかり自信があるんだ。それは父親の影響だった。
父のギターテクニックはプロ並みで、まれにプロの仕事の依頼がくるくらいの限りなくプロに近いアマチュアミュージシャンだった。
テレビの歌番組で見かける有名な歌手のコンサートで、バックでギターを弾いたことをいやというほど聞かされたもんだ。そんな時父はテレビ画面を指さし(食事中は箸でさした)自慢した。
でもそれは何度聞かされてもいやではなかった。いやどころか誇らしく思っていた。父から聞くミュージシャンとしての仕事の話にはいつも興味津々だった。ぼくだって父みたいにミュージシャンになりたいと思っていた。父がなれなかったプロのミュージシャンに。
「雨が降ってほしいの!あたしは雨を待ってるの!」
かすみの声が大きくなってる。
彼女の声は歌声のようだ。雷の音は彼女の歌声にハモってる。
ぼくは中学二年から高校一年の時までバンドをやっていた。
線路の高架下にある音楽スタジオとライブスペースが一緒くたになった小さなハコ、その会場で先輩のバンドがよくライブをした。
高校に入ってからぼくらのバンドも何回か前座で二三曲やらせてもらったことがある。キャパ50人という小さな会場だった。ぼくらにはそれでも荷が重すぎたが、先輩のバンドはいつも見事なものだった。会場はいつも盛り上がった。実力があり安定感があって惚れ惚れするほどかっこよかった。
そのバンドの先輩から久しぶりに電話があり、「女性ボーカルを探してる」って事を聞いた。
「(バンドの)メンバーで大喧嘩になっちゃってさ。結果、ボーカルが抜けちゃったんだよ」と金髪で長髪、高身長で割とイケメン、ギター担当のぼくより3つ年上の先輩、カズヤさんが言った。「裏切り行為だよ」と付け加えた。
「困ったもんだよ。月末にはライブも決まってんのにさ。アマチュアは責任ってもんを知らないんだ」とプロの立場で物を言うカズヤさんもまたアマチュアミュージシャンだ。
ぼくは喧嘩になった理由を聞こうとしたがやめた。とても込み入った話かも知れないし、馬鹿馬鹿しい理由かもしれなかったからだ。「そんなことで喧嘩します?」とも言えないじゃないか。ぼくはただただ相槌をうつことに終始した。
カズヤさんは、「ライブが決まってるから早急に新しいボーカルを決めたい」という事と、「もう男同士の喧嘩はこりごりだから、ボーカルを女の子にしようかって思ってる」という事を年下のぼくに相談するみたいに話してくれた。
ぼくは先輩が考えている以上にその話を真剣に聞いた。
そこでぼくはぴん、ときた。魔術的な能力をもつ占い師みたいにぼくには未来が見えたんだ。水晶玉に浮かびあがった光景、それは未来。
ギターの弾けないギター女子のこれから歩むべき道。
ぼくは彼女のプロデューサーになった気分で先輩に話したんだ。将来有望な新人女性ボーカリストの存在を。
彼女はめちゃくちゃに喜んでいた。直感少女のかすみは、即座に「絶対にやる!」とぼくに言った。「絶対に」と言われてもその合否はカズヤさんと他のバンドメンバーが決めることだからなあ、と苦笑いするしかなかったが、熱意としては充分だった。カズヤさんに心置きなく紹介することができた。
さっそく彼女はカズヤさんからデモテープを渡たされた。「歌詞書いてみない?」って言われたんだ。
そのデモテープには全部で三曲入っていて、二曲がアップテンポのホップな曲で、残りの一曲がスローなバラード曲だった。いわゆる歌詞が書けるかどうかの試験みたいなものなのだろうと察した。
「あたし、才能ないのかしら」
彼女が夏休みの宿題が終わらない小学生みたいに絶望的な顔をして言ってた。その前の日まで「あたし天才かも〜」とか言ってアップテンポな曲の歌詞を書き終わり自慢してたくせに。
かすみはバラード曲の歌詞が書けないんだ。
だから今にも雨が降りだしそうな重たい雲の下で、やがて降る雨のように自分の中に何かが降り注ぐことを待っているのかもしれなかった。
「タツ、お願い」
とても悲しそうな顔をしてぼくを見た。
今の君じゃなくても、ぼくは君の願いなら何でも聞くよ。お金が必要となること以外なら(バイトもしてないぼくの小遣いでは何の足しにもなりそうにない)。でも彼女はぼくの気持ちを無視するように言った。
「今日だけは一人にして」
感じのいいネクタイを締めていた。明るい色合いの派手すぎない柄の。
朝のニュースに出演していた天気予報士は二十代半ば、朝にぴったりのさわやかな笑顔で、そのさわやかさとは裏腹な天気図の前にして「大雨による河川の氾濫、土砂災害などにご注意ください」と伝えていた。
ほんとだ。彼の言う通りだ。
ぽつぽつと降りだした雨は、ぼくが家に帰り着くのを待ってもくれず、驚くほどの早さで水滴を装填したマシンガンのように空から断続的に撃ってきた。ぼくはもうちょっとで撃たれて死にそうになりながら命からがら家にたどり着いた。
その頃にはもう、重たい雲からマシンガンを構える殺し屋の弾は尽き、雨は少し弱まってきていた。この短い時間におさまったということは、今日のゲリラ豪雨はあまり調子にのっていない程度を知るヤツかもしれない。或いは調子にのった夕立かもしれなかった。いいじゃん、たまには夕立が調子にのったって。
ぼくは傘を持って彼女を迎えに行こうかとも思ったがやめた。
「今日だけは一人にして」
彼女の言葉が頭をよぎったからだ。松任谷由実の歌(父の影響だ)のようにリフレインした。縁起でもない、ぼくらは別れたわけじゃない。
「竜史(たつふみ)、あんたかすみちゃんと一緒じゃなかった?」
家に帰ると待ちかまえていたように母が訊いてきた。
ぼくとかすみは幼馴染で、二人の母親同士も仲が良かった。
「橘さんにスーパーで会ってね。昨日死んじゃったんだって、ハミングが」
「え?ハム犬(けん)が!」
ぼくは驚いた。橘家で飼われている(飼われていたというべきか)犬の名はハミング。かすみが付けた名前だ。ぶくぶくと太った柴犬で、その姿はボンレスハムに見えてぼくはハミングのことを「ハム犬」と呼んでいた。彼女とは15年近い付き合いになる老犬だった。
ぼくは母との会話を早々に切り上げて踵を返して再び玄関を出た。
かすみはハミング(ハム犬)をほんとにかわいがっていた。家族のことのようにハミングのことをぼくにいつも話してくれた。かすみを一人にしてはいけないと思った。彼女は「今日だけは一人にして」と言ったけど。今日だけは一人にしちゃいけなかったんだ。
ハム犬が死んで悲しいのはぼくもおなじだ。ぼくは自分の中で込み上げてくる悲しさを襷のように肩にかけて彼女がいるはずの場所に走った。吹きつける風が襷を揺らし首に巻きつくような格好で悲しみがまとわりついた。
彼女が泣いていたなら、散々泣かせてやった後でなぐさめてやろうと思った。とにかく、一人で泣かすわけにはいかなかった。幼馴染として。いや、それ以上の存在として。
「今日だけは一人にして」と言った彼女。
高校からほど近い川に架かる(高校から数えて)3つ目の橋の上にその姿はなかった。
いつまでもここにいる理由はない。
家に帰っていてもおかしくはない。
ぼくはさっきまでの雨でいつもより水かさが増し濁った川の流れを橋の上から眺めた。
にぎやか過ぎる川の流れに耳をすませるとギターの音が聴こえてきた。かすみが軽音部で練習していた曲だ。
「あいつにしちゃあ上手すぎるな」と思いながらも咄嗟に、ぼくは災害時のサイレンみたいに名前を呼んだ。
「かすみ!」
「タツ?」
かすみの声だった。ぼくはその声がどこから聞こえてきたのかを探す。川の激しく流れる音に邪魔されながら。
かすみの声というよりも、ギターの音がまだ聴こえてる。橋の下だ。
ぼくが橋の欄干に身を乗り出して下を覗くと、見上げるかすみと目が合った。
「雨やどりしてた?」
「いいえ、ギターを、聴いていたの」
ぼくは橋のすぐ横にある急な角度の石段を降りる。ギターの音がまだ聴こえてる。素敵な曲だ。
だけど彼女はギターを持ってなかった。それに彼女がこんなに上手く弾けるはずがない。
あまりに素敵な曲なので、ぼくはおもわず歌いたくなった。仮にぼくが歌っていたとしたら、石段を降り切ったこの時点で歌い続けることはできなかっただろう。それほどに息をのんだ。呼吸のリズムが大きく狂った。自分の振動に耐えきらなくなって倒れたメトロノームみたいに、ぼくは驚いて後ろに倒れそうになった。
青い男がギターを弾いていた。
なんでぼくは彼を「青い男」と思ったのかもわからずに、目の前の光景をそう捉えた。「青い男がギターを弾いていた」と。
青い男の説明をするのはとても難しい。
その難しいことをあえて簡単に説明すると、こうだ。
青い男とは、畳一畳分の青い画用紙を人の形に切ったようなぺらぺらの人間である。
その前に畳一畳分の青い画用紙は存在しないはずだ。
前に文化祭でなるべく大きな画用紙を必要とし、文房具店に買いに行ったことがあったが、四つ切り画用紙の四倍にあたる全紙でも縦幅は1メートルちょいだった。畳一畳はもっと大きい。いや、そんなことはどうでもいいか。青い男の話に戻る。
青い男は、畳一畳分の青い画用紙を人の形に切ったようなぺらぺらの人間。
いや?人間だろうか。厳密に言えば人間ではない。青い画用紙だ。文房具店で買うことのできない青い画用紙。
だが彼は、橋げたの土台となるコンクリートの橋台に腰かけて、足を組みギターを腿の上に乗せメロディーを奏でていた。
ギターの弦を押さえている右手(彼は左利きのようだ)も、ピックを持つ左手も五本指にカットされている。
でも人間の手のようでもない。カクカクとしていて、ロボットの手のようだ。
からだも全体的にカクカクとしている。頭の形も四角(やや縦に長い)だし、腕も胴も足も、どこにも丸みは見あたらない。
「彼はブルーヒューマンと言うの」
かすみが青い男に手のひらを向けて紹介した。
ブルーヒューマン?青い人間だ。
人間であることは正解したが、その名前からは性別までは分からない。
「とってもギターが上手いの」
彼女はうっとりした表情をしていた。「あたしをなぐさめてくれていたの」
青い男改めブルーヒューマンは、ぼくらの方にほんの少しだけ視線をおくりながら、基本的には川の方を向いてギターを弾いていた。不思議だった。ブルーヒューマンには人間でいうところの「目」なんてないのに、視線を向けられたことに気づいたし、川の方に向いていることもわかった。
それよりもっと不思議だったのは、ブルーヒューマンが弾いていた曲は、『悲しい色やね』だった。
どこかで聴いたことのある曲だな、と思っていたら、父もたまに弾き語りをしていた上田正樹の曲だった。
「『悲しい色やね』だ」と、イントロクイズの答えのように独りごとを言った。
「知ってるの?」彼女は訊いた。
ぼくは、「泣いたらあかん、泣いたら、せつなくなるだけ」と心の中で口ずさんだ。そうだ、かすみは泣いていたんだ。
「ハム犬…」ぼくは彼女に何か言ってやりたかったが、何かを言おうとして言葉が続かなかった。「泣いたらあかん」とも、「せつなくなるだけだ」とも言うことはできなかった。
「ごめんね。ハミングが死んだこと言ってなくて」
かすみは涙を隠すように笑った。「泣いたらあかん」と心に決めたように。
ハム犬のことはぼくも大好きだった。
かすみとハム犬の散歩にもよく付き合っていた。彼女の代わりにぼくが散歩に連れて出たことも何度かあった。ボンレスハムのような胴体を左右に揺らしながら相撲取りのように歩く姿はとても愛嬌があった。
「もうアイツと散歩に行けないってのはやっぱり寂しいもんだね」
「仕方ないわ、死んじゃったんだもん。それに歳だったから歩くのも辛かったはずなのよ」
「長生きしたよ」
ブルーヒューマンの弾く曲が変わっていた。『木蘭の涙』だ。またしても父がよく弾き語りをしている曲だ。ブルーヒューマンと父は同年代なのかもしれない。ハム犬との別れにぴったりな曲だ。
「いい曲だ」
「なんて曲?」
「木蘭の涙」
「だれの曲?」
「スターダストレビュー。知ってる?」
「知らない。歌ってみてよ?」
「恥ずかしいよ」
「歌ってよ。もっとあたしをなぐさめてよ」
ぼくは少し考えてから歌うことにした。
父のように上手く歌えるか自信はなかったが、父の弾き語りを散々聴いて育ってきたんだ。歌えるはずだ。
ブルーヒューマンはぼくが歌おうとしていることに気づき、またイントロから弾き始めてくれた。気の利く男だ。たぶん男だ。
ぼくは歌った。彼女になぐさめの言葉を選びだせなかった罰のように。せめてもの罪滅ぼしのように、心をこめて歌った。
限りなくプロに近いアマチュアミュージシャンだった父は、充分にプロとしてやっていける腕をもちながら、生活の安定のためにサラリーマンの道を捨てなかった。
それは僕のためでもあり家族のためだった。そんな父のことを思うと、ぼくはミュージシャンになるなんて夢を見ることができなかった。
ぼくの夢は第一希望が永久欠番みたいになって、第二希望以下がワンランク繰り上がった。
だから高校一年の時まででバンド活動はやめた。
直接の原因は自然消滅みたいな曖昧なものだったのだけど、ぼくとしてはやめる理由にはちょうど良かった。やり続ける理由を失っていたからだ。
でもぼくは歌うことが好きだ。
かすみとおなじだ。
ぼくは彼女をなぐさめるように『木蘭の涙』を歌った。
歌詞はなんとなくしかわからない。わからないところは勝手に作って歌った。かすみとハム犬のことを思って即興で考えた歌詞だ。それがなぐさめになればいいと思った。
そして、ぼくはギターを弾くことが好きだった。
父とおなじだ。
ぼくは父がギターを弾いている姿を思いだす。そう、ちょうどブルーヒューマンのような姿だ。
ぼくはスターダストレビューのその曲をたぶん弾くことができる。父が弾いているのを聴いてきたから覚えてるはずだ。
橋が少し揺れた。橋の上を大きなトラックか何かが走ったのだろう。
橋の上にトラックが走る。
橋の下でぼくはギターを弾き歌っている。
ぼくは橋げたの土台となるコンクリートの橋台に腰かけて、足を組みギターを膝の上に乗せメロディーを奏でながら歌った。
基本的には正面の川の方を向いて、時々彼女の方を見ながら歌った。
目の前でかすみがそれを聴いている。
雨は少しまえにあがった。
かすみはバラード曲の歌詞がまだ書けてない。
ぼくはブルーヒューマンとおなじ左利きだ。
昨日、ハム犬が死んだ。
そして僕の歌に彼女がハミングした。
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