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「どちらか選べ。旦那か子供か」
男は銃を手に無慈悲に女に言った。
女はがくがくと震えながら首を横に振った。
「で、できない!そんな、できない!」
捕らえられた女の旦那と小さな子供は絶望的な目で女を見ていた。女はそんな二人のどちらかを選ぶなんてとてもできなかった。
「馬鹿だなあ。選べないってことは、どちらも選ばないってことだぜ?」
銃を手にした男はそう言ってかちりと撃鉄を起こした。女はその音にはっとして、涙を流しながら叫んだ。
「やめて!
子供を!子供を助けて!」
その瞬間、女の旦那は頭を撃ち抜かれた。女は人形のように倒れいく旦那を見て、男を虚ろな目で睨んだ。そして、床に散乱していた食器の下にあった果物ナイフを掴むと、
「あ」
男が止めるよりも早くそのナイフを自らの首に突き刺した。
「女は生かして捕らえろって話だったんだがな」
男は独りごちる。
「まあ、仕方ねえか」
「おい、その子供はどうするんだよ?」
男は失禁してしゃがみこむ子供を見た。子供は焦点の合わない目を男の方に向ける。男はそんな子供を哀れに思ったのか、
「こいつは俺が面倒みる」
そう言って、子供の腕を引いた。
「坊主。行くぞ」
男が家のドアを開けると、青い月が煌々と地を照らしていた。子供はその月をぼんやりと見上げた。
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