続・暇を持て余した神たちの××な遊び

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続・暇を持て余した神たちの××な遊び

「バアル」 「……」 「おい、バアル!」 「ふがっ?」 雨神(バアル)の細長くしなやかな身体が、ビクンと震えた。 薄い瞼が小刻みに震え、ゆっくりと押し上げられる。 すると、水面のように美しく揺らめくふたつの瞳が現れた。 「雷神(トール)……?」 丸く切り取られたマリンブルーの世界を、真っ赤な影が埋め尽くす。 「いつまで寝てる。早く準備しろ」 「えぇー……もう?」 「あと五分で全能神(ゼウス)の積乱雲が完成するぞ」 なるほど。 確かに眼下では、いかにも夏らしい白い塊がもくもくと立ち込めている。 天上(うえ)からは人間界の様子がまったく透けて見えないほど厚い。 太陽の光も完全に遮られ、きっと雲底は真っ暗闇だろう。 さすがは全能神と言ったところか。 「まーたゲリラ豪雨振らせんの?ゼウス様もお盆くらい休めばいいのに」 大事の字に投げ出していた身体をおこし、バアルがぼやく。 「しょうがないだろ。俺たちには夏休みなんてないんだから」 「人間たちはいいよな。梅雨明けしてやった途端に、夏だ海だ蝉取りだとはしゃぎやがって」 「お前、蝉取りなんてしたいのか」 「ちっげえよ!」 いかにも不可解な物を見るようなトールの視線を受け、バアルは槍を振り回して憤慨する。 「俺は海に行きたいの!マッチョなメンズの裸を直に見たいの!なんならペタペタ触ってハアハアしたいの!」 「ああ、そっちか」 「そう、そっち!だからっ……トール?」 「これが俺の胸筋だ」 「……」 「それからこっちは鍛え抜かれた上腕二頭筋……」 「だ、だから!そういうのやめろって言っ……んむ!」 「バアル……」 「ちょっ……あ、もっ、やめろ、って……!」 「好きだ……」 「んっ……ふ、あ、ぁ……っ」 ザアアアアアアァァァッ。 「……あ」 「しまった!まだ早かっ――」 「バアアアアァァアアアアァアルウウウゥゥゥーッ!」 ゴゴゴゴゴ、と積乱雲が渦を巻き、空気を唸らせながら重低音が響いた。 ヒィッ……と身を縮こませ、バアルは恐る恐る下界を覗き込む。 途端に、長い白髪を逆立て全身をバチバチと発電させた全能の神と目が合った。 全能神(ゼウス)は怒っていた。ものすごく怒っていた。 「バアル、何度目のフライングだ!」 「ゼ、ゼウス様!これには深ーい訳が……っ」 「聞かぬ!バアルはおやつのかき氷抜き!」 「えぇっ、そんなあ!イチゴ味のシロップ、やっと手に入れたのに!」 バアルはじたばたするが、すぐにゼウスに睨まれ大人しくなった。 シュンと肩を落としてしまった後ろ姿が、まるで子供のようだ。 トールは心の中でこっそり笑ってから、形の良い耳に顔を寄せた。 「心配するな、バアル」 「え……?」 「俺の分、半分こしてやる」 「ト……!」 ザアアアアアアァァァッ。 「バアアアアァァアアアアァアルウウウゥゥゥーッ!」 fin
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