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『塩素と水道管のにおいだと思う』
「えんそ?」
『雑菌が増えることを抑えるために、少しだけ薬品が入ってるんだよ。それからこのアパート…できてからだいぶ経つから…』
レイは「なるほどのう」と言ってから、コップに満たされた水を1口飲んだ。
「余計な味はするが品質は確かじゃの。これほどの水が栓を捻るだけで出てくるとは…ハジメ、お前はこの世界の貴族か?」
『まさか、そんじゅそこらにいるフリーター…下っ端労働者だよ』
そう答えると、レイは疑うように僕を眺めた。
「下っ端労働者のくせに大層な邸宅に住んでおるの。で、これがセッケンじゃったか」
『ああ、こういう風に泡立てて…』
「なるほど。これで手を洗う訳か」
手を洗い終わると、レイは置いてある歯ブラシに目を向けた。
「これは?」
「歯ブラシ。歯を磨くためのものさ」
「やはりそうか…これは何の毛だ?」
『多分、化学繊維か何かだよ』
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