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「かがくせんい…」
レイは歯ブラシを蛍光灯に向けると、真剣な表情で眺めた。
『レイは、今まで…どうやって口の掃除を?』
「歯ブラシはあったが、持てたのは我らのような貴族か金持ちくらいじゃ。普通の人間は砂と細く削った木を使っていたの」
『毛で磨けるの!?』
「馬の毛はいいぞ。人によっては豚の毛の方が使いやすいらしいが。まあそんなもので歯を磨けるのなんて、本当に一握りじゃ」
僕は少し考えていった。
『君のことだから、ドラゴンの鬣とかペガサスの毛が出てくると思った』
「戯け! そんな貴重な代物を日用品に使えるか!」
とにかく、レイに手を洗わせたので居間に案内することにした。ところが、彼女は小部屋の前で立ち止まってしまった。
「む、この小部屋からも…水の気配がする」
僕は彼女の感覚の鋭さに舌を巻いた。
『ああ、そこはトイレさ』
「トイレ!?」
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