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慌てて視線を逸らそうとしたら、レイが服を着ていることに気付いた。その格好はここに来る前の魔導師のローブを思わせる、白地に赤い模様の入った民族衣装だ。髪の毛を乾かすためか、頭にだけは僕の渡したバスローブを帽子のように被っているので、何とも奇妙に思える。
「なかなか便利な道具じゃった」
『そ、それはどうも…』
こう返すのが精いっぱいだ。一体、彼女はどうなっているのだろう。
立ち上がって対面席を引くと、レイは満足そうに腰かけた。
『その服…魔法で出したのか? 便利だね』
「簡単に言うでない。この術は負担が大きいのだ。早いところ魔界に帰りたい」
レイは疲れ切った様子で頬杖をついた。考えてもみれば、黄泉の国と思われる場所からここまでワープしたのだ。元気な方がおかしいと思える。
冷蔵庫から飲み物を出すと、レイはグラスを眺めながら言った。
「この灰色の液体は何じゃ? 初めて見る飲み物じゃ」
『コーヒー牛乳。コーヒー豆という豆を煎じて、牛の乳と混ぜた飲み物だよ』
「ほう…この世界にも牛がいるとはのう…どれどれ」
彼女は上品にコーヒー牛乳を飲むと頷いた。
「甘すぎる気もするが…好きな者は好きじゃろうな」
彼女はそう言うと奥の部屋を眺めた。
「ところで、奥の部屋はどうなっておるのじゃ?」
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