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「もちろん、わらわとしても手ぶらで本国には帰れん。せめてこの箱いっぱいの胡椒を手土産にしなければ一族の恥さらしものになってしまう」
レイはそう言いながら鉄の箱を僕の前に出した。昨日の金貨の入った物より2周りほど大きい。
『店が開くのは10時ごろだよ』
「では、今のうちに腹ごしらえと行くかのう」
『じゃあ、昨日の残ったご飯でお茶漬けでも作るよ』
食事を終え身支度を整えると9時45分になっていた。これなら店に着いたときにはちょうど10時ごろだろう。
ドアを開くと、外はまさに5月に相応しい陽気だった。
「うむ…なかなか良い天気じゃな」
レイは雑誌で見た芸能人の衣服から気に入ったものを見繕い、複製していた。本人は疲れると言っていたが、こんな便利な魔法があるのなら、ぜひ教わりたいものだ。
表通りに出ると車が目立つようになり、自転車や歩行者ともすれ違うようになった。彼らの視線が気になったが、特に変わった動きはない。
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