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『昼食はそこに用意したから食べて。それから、呼び鈴が鳴っても出なくていいよ。どうせセールスか何かだから』
そう答えると、レイは不満そうに僕を見た。
「野良仕事など放っておいて、わらわを守れ」
『あのねぇ…仕事しないと、生活できないから!』
そう強い口調で言うと、レイは渋々という様子で言った。
「今のお主なら、どこの勢力でも三顧の礼で迎えるだろうに…」
レイはこの世界のことをよく理解していないようだ。
『じゃ、行ってくるよ』
「うむ、気を付けての」
そう言ってドアを閉じた。僕が向かうのは勤務先である配送センター。週5日で9時から17時までの7時間勤務(1時間休憩)。休日は火曜日と金曜日の2日。レイと出会った日は月曜日で、帰宅途中で交通事故に遭っている。
歩き慣れた道を進んで行くと雑木林が姿を見せた。ああ、ここか…と心の中で呟くと、痴漢に注意という看板を一瞥した。
この場所は、廃工場、雑木林、墓地と嫌なもの3点セットが並んでいる。勤務先でも有名で、"あの痴漢ってお前だろ!"と仲間とふざけ合っているが、基本的にこの道は誰も通りたがらない。
とはいっても、白昼堂々と痴漢が姿を現すはずもなく、僕は予定通り配送センターにたどり着いた。
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