月曜のアクシデント

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 この無数の影が見え隠れする世界に、不釣り合いな影が幾つか映った。その正体はコウモリがワニのような口を開いた不格好な生き物だ。  少女は牙を覗かせると不敵に笑った。 「こんなに早くわらわの転移に気付くとは…侮れん奴らよの」  その笑みが消えた。 「一匹残らず、叩き落してくれるわ」 『後ろ!』  何とその影は陽動だったようだ。僕や少女の頭上には3匹の生き物が飢えた犬のように食らいつこうとしてくる。  彼女は目視もせずに右腕を動かした。  すると、彼女の背から尻尾のようなモノが姿を見せた。赤々とした鱗に覆われた龍を思わせる尾。それは、迫った不格好な生き物が次々と薙ぎ払っていく。  続いて本隊と思われる6匹の生き物の群れにも爆発が起こり、4匹が巻き込まれ、炎に飛び込んだ蚊トンボのように燃え落ち、残る2匹は逃げようとしたが、少女は鞭をいつの間にかしまい、指先を2匹の使い魔に向けた。 「逃がさぬ」  少女の指先から飛び出した炎は逃げる2匹を追尾し、結局すべて撃退してみせた。  全く、心臓に悪い。僕はこういう荒っぽいことは苦手だ。
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