39人が本棚に入れています
本棚に追加
/274ページ
共同生活、開始
戻った場所は、先ほどの事件現場だった。
僕をはねた車の運転手は、慌てた様子で車外に飛び出して辺りを見回している。彼の目はやがて僕を映した。
「だ、大丈夫かね…君!」
その車の下には、くっきりとタイヤ痕が残っていた。紛れもなく僕がはねられた直後の世界だが、僕のいる場所だけは、車の前から安全な斜め後ろ側へと移っている。身体を見回してもケガはおろか痛みすら感じない。
どう返答すべきだろう。一応、病院で検査を受けた方がいいのだろうか。
悩んでいたら少女の声が聞こえてきた。
「私も兄も大丈夫ですよ」
「ああ、よかった…轢いてしまったかと焦ったよ」
その高齢のドライバーはホッと胸をなでおろすと、携帯電話を取り電話を始めた。僕は少女を見た。
『おい、一体…どうなってるんだ?』
「さっき言ったじゃろ。どんな危険なものも、当たらなければ問題ない」
最初のコメントを投稿しよう!