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「ねぇ、このあとどっか行かない!?」
道端でぶつかった俺たち。
俺の肩から落ちたカバンを拾いながら目の前の人物はそう口にした。
「.......え?」
「俺、そこの高校通ってる2年!すげぇ俺のタイプなんだよ!」
「.......へぇ」
目の前の人物は、俺の事を完全に女だと思ってるらしい。
俺は今、姉貴の経営するメイドカフェに駆り出されるために女の格好をしているだけで、正真正銘の男だ。
そして、目の前の男と同じクラス。
「今は、バイトに行くとこなので.......とりあえず連絡先渡しますね」
少し、可愛らしい声でメモに連絡先を書いて渡せば、キラキラと輝く笑みを俺に向ける。
「俺、安東蒴(あんどうさく)。君は?」
「南十羽(みなみとわ)です」
名前は嘘だ。
これは、俺の姉ちゃんの名前。
本当の名前は、南航希(みなみこうき)。
この名前は決して言うわけにはいかない。
どうして、俺がクラスメイトのこいつに、正体を明かさないのか。
それは、俺がコイツを好きだから.......なんてことはなく、嫌いだから。
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