はじまりは突然

3/17
453人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
クラスのカースト上位にいるようなモテモテな男。 俺は、こいつのことが嫌いだった。 別に、なにかこいつにされたわけじゃないけど、自分にはないものを持っていてただ羨ましかったんだと思う。 だからかな、魔が差したんだ。 昔から「女の子みたい」とからかわれ、高校生になってもそんなふうにみられる。 挙句は、ちょっと女装しただけで、ナンパされる始末だから笑える。 でも、この容姿のおかげで、嫌いなクラスメイトを騙せることができるとわかって、俺は内心浮き足立っていた。 「十羽ちゃん、デートできる日教えてね!」 キラキラした笑顔のまま、俺に手を振って去っていく。 「だから、キラキラしすぎなんだって.......いつも」 俺は、その笑顔が嫌いだった。 だから、その笑顔を奪ってやりたいなんて、黒い気持ちでアイツの誘いに乗った。 『こら、いつまで外にいるのよー!もう出勤時間よ!』 姉貴の怒鳴った電話なんか、大して気にならないほど、俺は浮かれていた。 クラスのカースト上位にいるアイツの悔しそうな顔が見られると思ったら、姉貴の激怒なんて大したことがなかった。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!