ちょっとした回り道

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サークルに入って、私には気になる人ができた。 けんとさんである。 細身で背が高く、おしゃれで爽やかである。 上京してきたらしく、方言がたまに混じる。 それもポイント高め。 最初テニスを教えてもらう機会があり、優しく教えてもらって癒されていた。 そしてその後のお食事会で席が隣になり、いろいろお話した。 けんとさんは自分の趣味のサーフィンの話をしていて、私にはよくわからなかった。 でも嬉しそうに話している姿に見とれて、話を聞いていた。 私は恋をしたのかもしれない。 そしてけんとさんは恋人はまだいないらしい。 私にもチャンスあるのかな? そしてけんとさんに二人での飲みにも誘われ、私の心はさらにけんとさんへと傾いていった。 だが、そんな夢心地の私は一瞬でどん底に落ちる。 なんとけんとさんには恋人がいたのだ。 見てしまった、嬉しそうに手を繋いで歩いているところを。 確かにすごくかっこいいから、いてもおかしくはないと思ったんだけどね。 それなら先に言ってくれてもいいじゃない。 だから私は、けんとさんに誘われていたディズニーデートをお断りした。 そしてサークルでは私とけんとさんの噂が流れてしまっていた。 けんとさんが周りに言いふらしていたみたい。 捨てられた自分を知られるなんて辛すぎる。 サークル自体辞めてしまおうか。 毎晩迷いと不安で眠れず布団を握りしめる日々。 そんな辛い日々を過ごす私に連絡をくれたのは、亮太さんだった。 飲みに誘ってくれたのはすごく嬉しかった。 テニスをしている姿はいつも見ていたけれどあまり関わる機会はなかった。 だからお話しできるのがすごく嬉しいし、今辛いときだからお酒もたくさん飲みたい気分であった。 にぎやかなバーに入る。 こんなの初めて。 亮太さんはこんなところも知ってるんだ。 そして亮太さんが年齢確認されてる。 顔が幼いのを気にしている姿がかわいい。 そして亮太さんに噂のことを聞かれた。 「今日は来てくれてありがとう。 あの噂は本当なの?けんとにふられたの?」 亮太さんは気まずそうに聞いてきた。 「そうなんですよ~。 けんとさん思わせぶりですよね~、だまされちゃいました。」 私は亮太さんに心配をかけないように気をつけて言った。 でもやっぱり悲しい。 「そうだったんだね。 でも美香はモテそうだし、またすぐ出会いありそうだよね。」 亮太さんは私を励ましてくれる。 気を遣っていってくれたのだとしても、嬉しい。 「そんなことないですよ~。 でも、もうこうやって噂が流れるサークルでの恋愛はもうしないようにしようかと思ってます。」 私はサークル内恋愛が怖かった。 だから私は今思っていることを素直に言った。 とは言っても、私を好きでいてくれる人なんて他にいるかわからないけどね。 「そ、そっか、そうだよね。 いろいろ広まっちゃうのは嫌だよね。」 亮太さんは共感してくれた。 そうなの、広まっちゃうのが怖いの。 「だから次付き合うとするなら他大学の人ですかね~。 だから、出会いはしばらくなさそうです。」 言ってみて悲しくなった。 あー私も幸せになりたい。 私はこの時点で結構お酒をのんでいて、亮太さんが心配してくれて帰る時間を聞いてきた。 23時が門限だということを伝え、そのあと私はとにかくもう悩んでいることや嬉しかったことなどをしゃべりつづけた。 亮太さんが頷きながら聞いてくれるもんだからつい。 帰りは暗い夜道の中電灯の光を頼りに家まで帰る。 私はスッキリした気持ちと話しすぎて申し訳ない気持ちの混じった状態であった。 とりあえずは亮太さんにお礼のラインを送っておく。 すごくはなしやすかったなあ。 今までは話を聞いてばかりの繕っていた自分であったが、素でいられた気がする。 でもまさかここから私が亮太さんに恋をするなんて、考えてもみなかった。
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