友情

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 僕は柿野の喜ぶ姿を眼前にして、勉強を教えてやって彼を喜ばす事も成績を上げてやって彼を喜ばす事も冗談をやって彼を喜ばす事も、もう出来なくなるのか・・・という思いが募って来て索寞たる心境に陥ったのだ。  柿野はその気色を目交に僕の心情をほぼ察知したらしく自分も寂しくなって来て見る見る生気を失って行き、「全くそうなんだよ。だから僕、ケイタには本当に感謝してるんだ」と粛々と礼を述べた。 「僕も柿野には感謝してる。柿野のお蔭で明るくなれたし人気者になれたんだから」と僕も粛々と礼を述べた。 「いや、僕は只、笑ってただけさ、ケイタが努力したからだよ」 「いや、柿野が常に僕を盛り上げてくれたからさ。だって柿野は僕が人気者になって行くのを本当に心から喜んでくれてたんだから・・・」 「そうなんだ。僕、ケイタみたいな奴と友達である事が嬉しかったんだ。だから僕、ほんとは今度の転校は悲しくて堪らないんだ。嗚呼、僕は運命が憎い!だって、これからもケイタと交友を深めて行ければ、お互いに凄いプラスになる筈だったのに別れなければいけなくなったんだから僕は残念で堪らないよ!」
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