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が、二年生に進級して早々に柿野という同級生に話し掛けられ直ぐに彼と親しくなり友達になれた。柿野は誰もが近寄り難さを感じる暗くなった僕に自ら歩み寄って来る位だから今や絶滅したと言っても良く当時としても珍しい損得抜きで行動が出来る義侠心を持った人間で、外面だけでなく内面も明るい本物の明るさを持った人間で、僕同様、本物の友情を持った実直居士だった為、僕は柿野には心を開く事が出来たのだ。正に僕にとって柿野との出会いは盲亀の浮木とも言うべき奇跡的なもので僕らにとってお互いに縋り付く者となり面白い者となり義に関するメリットの有る者となった。
義とは「君子は義に喩り小人は利に喩る」と孔子が言う所の義だ。つまり多くの友人関係が利に関するメリットを重んじて繋がっているのに対し、僕と柿野は義に関するメリットを重んじて繋がった訳だ。だから僕らは諧謔的のみならず道徳的に交わる事で幸福感に満たされ、僕は堰を切った様に持ち前の面白い面を縦横無尽に発揮するようになり、笑い上戸の柿野の後押しも手伝って自分の面白い面が皆に伝わって行き、あれよあれよという間に彗星の如く現れたクラスナンバーワンの人気者になってしまった。暗かった一年生の時の事を思えば、正に奇跡が起きたのだ。
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