第1話 青い実は焦がれる

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第1話 青い実は焦がれる

 また、この日がやってきてしまった。 今日はあの人の、月に一度の食事日だ。  さぁ笑うんだ、エレイン。決してこの心をあの人に悟られてはいけない。  自分の気持ちを上手く隠すために、エレインは今日も鏡に映る自分と闘っていた。  ウェーブがかった青銀色の髪に澄んだ空色の瞳、鼻梁の整った(たぐ)(まれ)な美しき少年。人は彼を『先祖返り』と呼ぶ。(いにしえ)の銀狼一族の面影を色濃く継いだ、しなやかな体躯とその容姿。本来であれば華やかな色彩であるはずのエレインの瞳は、微かな憂いを含んでいた。  生粋の日本人の筈なのに、、、、なんで俺はこんなにも気持ちの悪いナリをしてるんだ? ……吐き気がする。  エレインの養父にあたる、『シャルル・漆黒・ドゥ・ノヴァイエ』は吸血鬼族である。  誇り高き吸血鬼一族がその誇りを投げ捨て、人類の監視下に置かれるようになってから十数年、遺伝子研究や抗吸血鬼薬の開発により、吸血鬼は月に一度少量の吸血をするだけで生命の維持が可能となった。  
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