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「じゃあ」
軽く言ってドアを開ける。涼介はハンドルに手をかけたまま、私のことを見ている。
「……寄ってく?」
我が家のカーテンの隙間からは、暖かい色の灯りがもれていた。まるで幸せな笑い声でも聞こえてきそうな。
「いや、いい。また明日来るよ」
涼介が言う。見つめ合って、どちらともなく軽くキスする。
「じゃあ、おやすみ」
「また明日な」
花束を抱えながら、涼介の車を見送った。
いつものように、その車が右折するのを確認して、門の扉に手をかける。
その時ふと、私は隣の家に視線を移した。
我が家と同じ造りの、建売住宅。
越してきたばかりの頃は、自分の家と見間違えてしまったほど、そっくりな家。
だけどその家の灯りは、ぼんやりと薄暗くて……私の足は、自然とお隣さんへ向かっていた。
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