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庭の小さな花壇に、部屋の灯りがうっすらと映っている。
薄闇の中で、ひっそりと咲く名前も知らない花。それを横目に、インターフォンを押そうとしてから、手を止める。
ドアノブに手をかけると、思った通り鍵は開いていた。
「こんばんは」
返事がないことを知りつつ、一応言って玄関に入る。
だらしなく脱ぎ捨てられている、見慣れた二十七センチのハイカットのスニーカー。
私はさりげなくその靴をそろえてから、家に上がりこむ。
我が家と同じで我が家と違う、床の感触。「よその家」の匂い。
ほのかに薄明りがついているのはリビングだ。私は真っすぐその部屋へ向かった。
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