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calmato
「えー、であるからに。日本の文化というのは、、、」
暖かな風が、数センチ開いた窓から教室の中に吹き込む。
「私が思うに。この時代の、、、」
スマホを片手にダルそうにする人。
恋人同士で肩を並べ、二人の世界に入り込む人と人。
「そこで、君達に聞きたい。今の世の中は、、、」
昼は何を食べようかと談笑するグループの、人と人と人、更に人。
人だらけのこの部屋に、一体どれだけの数が僕を知っているのだろうか。
「で、私の質問に答えてくれる子は、、、」
あれから。あの日々から解放された僕だけれど。僕は手に入れた自由を持て余していた。
「なんだ、誰もいないのか?うーん、それじゃー、、、」
結局、僕は何を望んでいたのか分からないまま。ただ、ただ、時間だけが流れ気づけば、、、
「おい、そこの君!黒髪の、眼鏡掛けてる君!君はどう思う?」
「、、、。、、、?」
「何ぼさっとしてるんだ。君、私の話しを聞いてたかね?」
「あ、いえ。その。考え事をしていて、、、」
クスクス
教授のため息と、生徒の笑い声が暖かな風と共に体を通りすぎた。
「はぁー、もういい。それでは、、、」
キーンコーン
チャイムと共にザワザワと部屋中が騒々しくなる。
教授は生徒に何かを必死に伝えようとするが、誰も聞く耳を持とうとしない。
あっという間に部屋の中は空になり、そこに居たのはブツブツと小言を溢す教授と僕だけ。
威厳あるはずの教授が、今この場においては公園に肩を落として上司の文句を言っているサラリーマンに見える。
そんな少し滑稽なようにも思える姿に思わず笑みが出た僕。
それに気づいたのか、ばつ悪そうな顔をしながらも、「き、君。ちゃんと講義は聞かなきゃならんぞ」と、教授らしさの威厳を見せつけながら部屋を出ていった。
そして、部屋には僕。ただ独りになった。
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