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初日は俺の実力を見るといい、問題集を一通り解いた。先生は俺の苦手な英語を主に見て、受験が近くなったら他の教科も教えてくれることになっている。
「今度、私のおすすめの論文持ってきてあげる。論文は過去形で事実しか書かれてないから、読むのは簡単だよ」
父の古いデスクチェアに掛けて、さらりと言う。思わず、
「飯田先生って医者なんですか?」
と顔を覗きこむと、
「医者じゃないよ。まだ大学の研究機関にいて、雑用してます」
と、肩をすくめた。
「来週までに解いておいて」
課題のリストにシュシュっと素早く印をつける。
「こんなに?」
「たったこれだけ。いい? 鹿児島大行くんでしょ? できないとは言わせません!」
突然の太い怒声に、俺は思わず縮みあがった。美人のくせにスパルタ。それが彼女の最初の印象だった。
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