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リリーが召喚されたのは、暗く、四角い部屋だった。微かにカビ臭く埃っぽい。とりあえず酸素濃度をはじめとした空気の組成を一瞬で走査する。すくなくともこの空間の組成は生身のリリーにも問題はないものだ。毒性は若干あるが、無効化出来る範囲。
さて、と辺りを見回す。『混沌の魔術師』は対価を払えば望みを叶えてくれる魔術師(時には悪魔や妖精)として知る人ぞ知る存在だ。一度開いた門を維持したり、再利用するのは比較的容易だが、今回のように繋がりのない世界線の間に門をこじ開けるには、かなり大量のエネルギーが必要だ。しかしこの部屋に、それだけのエネルギーを持つ存在は今はない。
リリーは慌てず騒がずなんでも袋から無難なローブとマントを引っ張り出して着替え、その他装備を整えた。
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