8 聖なる夜に丸太を叩き込む

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クリスマス会終了後、体育館の後片付けを手伝っていたあたしは梟首一郎に呼ばれた。後片付けをこばと園のスタッフや学校の先生方に丸投げするのはどうかと思われたが、少しぐらいならと、思い梟首一郎の誘いに乗った。 梟首一郎は屋上で待っているとのことだった。 梟首一郎は屋上で一人あたしを待っていた。この寒いのに…… 「待った?」 「ううん、いま来たとこ」 梟首一郎の手先は冷えて赤くなっていた。待たせちゃったみたいでごめんね。 「で、こんなところに呼び出してなに?」 「とりあえず、本題の前にお礼言わせてくれないかな?」 「お礼?」 「今日はケーキ作ってくれて有難う。天童に聞いたけど、チョコレートが無くて大変だったらしいな」 あたしは照れながら意味もなく頭を掻いた。 「いやあ、あんこで代用したらあんなにうまくいくなんて」 「ほとんどの子、あんこ嫌いなのに美味しい美味しいって食べてたぜ?」 「そんな、お世辞はいいよ」 「お世辞でこんな事言わねぇよ」 「あたしだって自分に出来ることしただけだし…… 天童くんの車にあんこが無かったら終わってた話だし……」 「いやいや、白鳥さんが一生懸命だっただけだよ」 こんなに人に褒められるのはどれくらいぶりだろうか。あたしは思わず赤面し、俯いた。 その瞬間、鼻先にぴとりと冷たい何かが付くのを感じた。空を見上げると雪がひらりはらりと落ちてくるのが見えた。 「雪……?」 「いいねぇ、ホワイト・クリスマス」 梟首一郎は両頬をパンパンと叩いて先程までのおどけた笑顔からいきなり真剣な表情にその様相を変えた。 「白鳥さん」 「はい?」 梟首一郎は一旦間を置き、呼吸を整える。 「俺、実は白鳥さんのこと…… 好きだったんだ」 「は?」 唐突な告白、あたしは言われていることは分かっているものの、何を言っているのかが分からなかったので思わず聞き返した。 「白鳥さん、可愛いし…… 男子から結構人気あるんだよ。知ってた?」 知らない。正直、男子からはお菓子作りが趣味の女程度の扱いなんだと思ってた。 「何より、お菓子とか作るのに一生懸命な姿見てると元気付けられるし、一緒に笑い合いながら、きみが作ったお菓子を食べられたら幸せなんだろうなって……」 「そ、そんな…… あたし、ただ自分に出来ることをがむしゃらにしてるだけで、元気つけられるとか、そんな言われても……」 人から愛の告白を受けたのは始めた。リエからは何回も「好き」と言われているが、冗談混じりなのが分かっているので別にドキドキも何もしない。だが、今の目の前にいる梟首一郎は一世一代の気持ち、つまり本気であたしに対して「好き」と言っているのだ。この熱意を感じ取ったのかあたしの心臓はこれまでに無いぐらい早い鼓動を打ち、胸をジリジリと熱く焦がしにかかる。 「そんな…… 急に言われても…… 梟首くんが思ってる程いい女じゃないよ、あたし」 「いや、素晴らしい人だよ! 俺、今は施設の子で天涯孤独だけど…… 施設の子供の世話とバイトで忙しくてなかなか遊びに行けないかも知れないけど、白鳥さんのこと大事にしてやりたいし、好きって気持ちは誰にも負けないと思ってる! だから、俺と付き合って下さい!」 梟首一郎はあたしに右手を突き出してきた。その手を握り「はい、お願いします」と、言えばクリスマスにカップル誕生だ。 あたしも晴れて彼氏持ち……
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