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帰りの道中は雪が積もるようになっていた。白く冷たい道を歩いていると、後ろでクラクションが鳴った。あたしはすいませんと言わんばかりに道の端に寄った。
「夜道の独り歩きは危険だぞ」
あたしにクラクションを鳴らしたのは天童赤鷹の冷蔵車だった。中に乗っているのは当然、天童紘汰にじいやさん。
「あ、今日はお疲れ様」
「おう、お前今日は頑張ったな」
「天童くんのアドバイスとがあったからよ」
「それはいいんだけど…… 車、乗ってけよ。さーむいだろ?」
天童紘汰はドアを開けた。トラックは暖房が効かせてあるのか、ムワッとした熱気がこちらに伝わる。
普通ならこのまま「宜しくお願いしまーす」と便乗するところだが、あたしは何故かそれを拒否した。
「大丈夫、近いから」
近いと言っても歩いて10分ぐらいだ。着込んでいるとは言え、体は芯から冷えている。
便乗しない手は無い。だが、あたしはそれを拒否した。
「遠慮するなって」
天童紘汰はあたしの手首を握った。その瞬間、全身が炎のように熱くなる。今までに体験したことのないこの状態に困惑しながらあたしは天童紘汰の手を払った。
「本当に大丈夫だから! あ、ありがとねっ」
あたしは雪道にも関わらずに全力疾走で天童紘汰から逃げ出した。家に到着するまでで転倒しなかったのは神がかり的な奇跡としか思えなかった。流石は神の子の降臨前夜の日、ご利益がマシマシになっているのかな?
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