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ホームルームが終わったその刹那、あたしは梟首一郎の机に向かって一目散に走っていった。去年の年末のこともあり気まずさは少しあったが、そんな事は気にしてられなかった。
「ちょっといい?」
「ああ、聞きに来ると思ってたよ。天童のことだろ?」
「いつから決めてたの?」
「夏に一度留学に行った時にはもう決めてたみたいだぞ。見どころもあったらしいぜ」
本場のパティシエさんに認めてもらえたのか。あいつ、悪いのは口だけで何だかんだで凄いやつだったんだな。
「白鳥さん、結局あいつに美味しいって言ってもらえたの?」
唐菓子にケチつけられた時点でもう諦めてる。あたしは首を振った。
「素直じゃないなぁ」と、梟首一郎は呆れたように言った。
「な、何よ…… どういう意味で言ってるのよ」
「そのまんまの意味だよ」
すると、あたし達の話を聞いていたリエが会話に割り込んできた。
「良かったんじゃない? 花緒莉はあいつのこと嫌いでウザがってたんでしょ? あんな馬鹿ボンボンの顔見なくてよくなって、せいせいしたじゃない?」
リエの言う通り、心境としては「ああ、いなくなるんだ。あいつ、アデュー(永遠の別れ)」ぐらいだった。だが、何故かスッキリしないし、胸がぽっかりと空いたような喪失感を覚えるのは気のせいだろうか。
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